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「てめっ、火拳!頼むから口を開くな!俺の胃に穴が空くわ!」

「なんだよお前。耳元で喋るなよ」



泣き顔のシャチにエースは宥めるように言う。
シャチはそんな事を聞く余裕もないようだ。



「火拳が話す度にリーシャが反応するイコール、俺の命がミジカクナル。わかったか!」



カタコトで説明するシャチにエースはとりあえず頷いたようだった。



「よくわかんねェけど。まァ落ち着けよ」

「理解してねェのかよ」



シャチはいつものようにつっこむ。
その正面でローがエースを睨んでいた。
リーシャはびっくりして、つい彼に話し掛ける。



「どうしたんですか、ローさん。おっかない顔してますけど」

「俺はいつでもイケメンだ」

「あ、私ったら……心配するほど馬鹿を見る事をすっかり忘れてた」



嗚呼、と頭を抱える。
そんなリーシャの心情をつゆ知らずと言ったようにローはフフフ、と不適に笑う。



(黙っていればかっこいーのにね……)



この意見は満場一致であろう。
リーシャがぼんやりと考えていると、不意にエースが口を開いた。



「そういえば、試練を無事にクリアしたからお前にクリスタル渡さなきゃならかった」

「あ、そーでしたね」



リーシャは、ゴソゴソとズボンのポケットを漁るエースに手を差し出す。
ポンとクリスタルを手の平に乗せられて、しげしげと透明の鉱石を見つめる。
改めて考えれば、リーシャは一体魔王とはなんだと思った。
若い娘達を攫う極悪な奴だと聞く。
が、その実死者どうのこうのとは聞かない。
だいたい、クリスタルを集めれば魔王の元に辿り着けるというのにも、しっくりとこないのだ。



「エースさん。聞きたい事が……」

「ん?魔王の事はタブーだから言えないぜ」

「聞く前に拒否られた」



エースにも心を読まれた気がする。
リーシャはガックリと肩を落とす。



「どうしてですか?教えてくれても罰は当たらないですよ」

「んー、罰は当たんねェけどなァ。あんまり魔王についての情報は言えないように口封じの魔法が俺達にはかけられているんだよな」

「えぇ!初耳です!」

「だろーな。それも含めて口封じされてるんだからな」

「これじゃあ情報を収集できない……」

「大丈夫だって!クリスタルさえ集まれば、こっちのもんだぜ」



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