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リーシャはローを見遣る。今にも泣きそうな顔をしていた。
そのままの勢いで切り掛かって来たので剣で受け止める。



――ガキッ!



刃と刃が擦れる金属音は聴覚にリアルに響いた。
初めて人を切る道具を手にしたリーシャにとっては嫌な音にしか聞こえない。
ギリギリと押し問答をする。



「わからねェよ。何でお前なんだ?たくさん候補はいたのに!」



ガキン、と再び繰り出される攻撃。
悲痛な叫びと真実。
初めてローの事を知りえたような気がした。
魔法使いはレベルさえ教えてくれなかったが、今やっと本音ごと見えた。



「私は誰とも戦いたくない」

「それでもお前は俺を倒さなくちゃいけねェんだよ」


冷静になる程ローは現実を目の前に突き付ける。
それでもリーシャは訴え続けた。



「ゲームとかは勇者が魔王を倒して終わりかもしれない……でも、これはゲームじゃなくて現実なんだよ……!」

「だから俺は戦うんだ」



ローの言葉にリーシャは首を思いっきり振りかぶる。



「私はローさんとは戦いたくない!ローさんはゲームのキャラクターなんかじゃなくて今だって生きてて、私も生きてる人間なんだよ……!!」



リーシャが叫べば魔王がギリッと奥歯を噛み締める音がした。
唇に噛み付かれる。



「ん!」



息を呑むがそれは熱い熱に覆われた。
抗おうと手を動かすが手を拘束されて剣が手から滑り落ちる。
涙が零れた。
泣きながら抵抗するが大きな手がリーシャを更に強く抱きしめる。



「な、んでお前なんだっ……!」



また同じ言葉を繰り返す。
がむしゃらにキスをしているのに、苦しんでいるのはローだった。





「私はただ、ローさん達を救いたいだけなんだよっ……」



リーシャの目から一滴の涙が零れ落ちる。
いつの間にか一つになっていたクリスタルにポタッと流れ付いた。
するとどうだろうか、クリスタルが途端に輝き始める。
ローは思わず身体を離し透明の結晶を見詰めた。



「何っ!?」

「これは……!」














***













もう諦める事を諦めるようになったのは随分昔の事。
魔王という役を世界から継がせられ悪役にしかなりえない自分にうんざりとしていた時、ローは暇潰しに見ていた水晶に突然映った少女の姿に目を奪われた。



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