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「戦うよりもっと良い方法だしな」



優しく抱いてやる、と言われギュッと拳を強く握る。
そうしていると、いつの間にか目の前に瞬間移動していたローがリーシャに近付く。
誘惑な美声で牢屋の時の様に誘う。
するりと頬を撫でられた。



「拒絶した事は特別に赦してやる。だから首輪を付けてくれるか?」



一瞬だけその恐怖に身体が強張る。



「なに、乱暴な事はしない。ただ最高の時間を味わうだけだ」

「――ローさんは?」



リーシャが質問すると頬にある彼の手がピクリと反応する。



「ローさんには最高の時間はないの?」

「一緒にという意味ならあるぞ」

「違う、幸せにはなれないの?」



今度こそローから艶やかな笑みが消えた。
と思えばいきなりキスをされる。
軽いリップ音がすると首筋にヌルリとした感触がした。



「幸せ?馬鹿言うな。俺は魔王でお前は勇者だ」



誰から見ても同じ位置に立てない役柄だと彼は嘲笑った。
やっぱり皆、誰も自分の人生を卑下している。
そう感じた。
必ず会う人会う人は瞳に陰りを持っていた。
それに気付かなかったリーシャは本当の愚か者だ。



「なァ、抱かせてくれ」



最後のSOSだと直感した。
リーシャはローを見下ろして固く目を閉じる。



「私は魔王を倒さなくちゃいけない勇者なんだよ」



そう言うとローは静かにリーシャから離れた。
そして、その手元には真剣である長い刀。
勇者が戦うならば魔王も武器を手にする。
それが最終章であり最終戦のシナリオ。
先程の雰囲気とは掛け離れたどす黒いオーラを纏うロー。
周りには黒い炎が揺らめく。
魔王の周りにも魔物がぞろぞろと地面から出現した。
リーシャはこん棒ではなく真剣を手にする。
このやり方は自分の本望ではなかった。
身体が勇者という言葉に連動するかのように聖剣を持たせてきたのだ。
思わぬ障害に驚くが強く強く剣を握り直す。
そして、



(……っ!)



覇気を発動する。
強力な力を解放した瞬間、魔物の大群はローを残して逃げるように消え去った。



「ハハッ……何だってんだよ……!」



魔王はそれを感じ、ついにペンギンの時と同様に悲しみの入り混じった叫びをリーシャに浴びせる。













「ふざけんじゃねェ!――なんでお前が勇者なんだ!……なんでっ……!」



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