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シャチはペンギンが感情を露にするのを初めて見た。
冷徹な男だとも思わなかったがあまり感情を表に出さない事が逆に心配していたのだ。
魔王の腹心であれど自分達は決して今の役柄を認めていない。
そんな中で感情が露出しないのは危険なサイン。
溜めすぎるとロクな事はない。
シャチは相棒みたいなペンギンに安心を感じると今まで旅をしてきた記憶が蘇る。
一番最初に自分達を責めたのは神殿の番人である巨体の巨人だった。
その次はエース。
あれは結構効いた。
肉を頬張りながらさらりと慰めかわからない言葉にこっちまで気落ちしたものだ。
ドフラミンゴも際どい事を言っていた。
リーシャにバレそうでヒヤヒヤした。
そして、何よりも悔しかったのを覚えている。
絶対に番人の中ではダントツに危険人物だろう。
ハンコックも同じような視線を四人に向けていた。
「解放して欲しい」「もう縛られたくない」。
どの言葉もまるで責めているような叫びにしか聞こえなかった。
一番傷付いたのは何て順位付け出来ない。
リーシャが最後の頼みの綱だった。



「リーシャ、もう行っちゃった?」

「おう、元気良くな」



ベポがシャチ達の前に走って来た。



「牢屋、開けたんだな」

「ううん、閉めたけど開いただけだよ」

「そうか」



ペンギンの問い掛けにベポは首を振る。
そう、たまたま勇者は牢屋から逃亡したまたま三人の包囲網を突破しただけ。



「俺、最低だけど……すっげェ最高の気分だ」



シャチがぽつりと零すと二人は嬉しそうに頷いた。
どんな結果になろうとも誰も彼女を責めはしない。



(後悔なんて冒険には付き物だろ?)











***











リーシャは全速力で疾走していた。
ギャアア!と雄叫びを上げる魔物を薙ぎ払いつつ前に進む。
魔法を駆使し、腕力で何とか道を作る。
直に真っ直ぐ続く道が見えてきた。
ほの暗い蝋燭がユラユラと回りを照らす。
同じ風景しかない場所から更に明るい場所に出た。
ボッと火が一気に部屋全体を明るくする。
階段の最上階に居座る魔王の姿があった。
お互い無言で見合っていたが、ローが先に口を開いた。



「俺の愛玩奴隷が檻から出て来たのか?イケナイ勇者だな」



何一つ変わらない表情を浮かべる魔王にリーシャは泣きそうになった。



「くくく、牢屋に監禁は……」



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