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この先、旅の命運を握っているのは紛れもなく勇者ということ。
リーシャの知らないところで運命は着々と、その道筋を通っているのだ。
「シナリオをなぞる、か」
前にローが言った言葉。
確かに、どちらの意味にせよ同じだと思った。
「抗うことなんて俺達には不可能だ。馬鹿なことは考えない方が楽だぜ?」
「そうだな」
皆、理解している。
自分達は所詮――。
***
リーシャとベポはマルコが出現させた橋を渡り、ホッと息をついているところであった。
「マグマ本当に怖かったよ〜。落ちたら死んじゃうし、橋はグラグラするし」
「建て付け悪かったね」
ベポも人間より倍は厚い毛並みに覆われているからか、汗をかいていた。
「で、なんでマルコさんがいるの?」
マルコも何故か付いてきていた。
「お前達を助太刀するのが役目だからだよい」
「わかってるけど……ゴールまで?」
「それは、俺の気分次第だ」
「ええー」
マルコの適当過ぎる言葉にリーシャは「殺生な」と言う。
「助太刀なし、よりマシだと思うよ」
「そだね」
ベポの言葉に、あっさりと納得する。
「さて、と……次はどうすればいいんだろ?」
周りを見回せば、やはり岩しかない。
岩といってもくっついていて、壁のようになっている。
後ろはマグマ、前は岩。
その時、マルコが小さく呟いた。
「もう少し先に行けばいいよい」
「お、助言?」
「助っ人だからな」
マルコは、けだるそうな表情で前を向いたままありきたりな事を言う。
リーシャはマルコの態度に納得しながらも周りをキョロキョロとした。
「ん?――んん!?」
歩いていると、前方に青々としたものが見えた。
「ベポ。ベポ、私疲れてるのかなぁ……」
「アイアイ、俺も幻覚が見えるよ」
「だよね、だよねっ……こんな火山地帯に泉があるわけないよねぇ?」
一人と一匹が目を覚ますように手でゴシゴシと摩る。
そんな時、マルコが呆れたように口を開く。
「幻覚じゃない。まごうことなき泉だよい」
「う、うぇぇ?泉ぃ?ありえない、ありえないって!」
リーシャは、思い切っり顔を振りかぶった。
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