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「火、水、雷、氷の各神殿に行き試練を乗り越えてこのコンパスで次の神殿に行くことができる」
とどこからともなくコンパスが現れ私の手に落ちる。
ファ、ファンタジー!
「そして魔王に勝利した暁には勇者の望む願いが一つ叶えられる」
「願い?」
番人の言葉に目を輝かせてしまうのは人間の性といいたい。
「そうだ。やることは魔王を倒すことのみ。期待しているぞ」
「……?」
番人の期待という言葉に何故貴方が期待を?と思い私は首を傾げた。
「じゃあさっそく向かうか」
「そうだね!」
「………」
シャチとベポは楽しげに歩き出したけどローさんとペンギンは難しい顔付きで歩いた。
「ローさんとペンギンどうしたの?」
「あ?……考え事だ」
「次はどんな神殿か考えてたんだ。試練というものも簡単に行き過ぎているからな」
ペンギンの言葉に確かに、と思いながら旅ってこんなにものなんじゃないの?って感じた。
難しいのは苦手だからね。
今だ下を向いて考え込んでいるローさんの手をそっと触れば驚いたように私を見た。
「どうした?積極的だな」
「なんでそういう考えに行き着くの」
人がせっかく!心配したのに。
「具合悪いのかなって思ったから!」
「悪くねェよ」
むくれる私に笑うローさんは私の頭をくしゃりと撫でた。
その仕草に胸がくすぐったくなってローさんの手が離れると私はベポに向かって走り寄りアタックする。
「わぁ!、どうしたのリーシャ?」
「べべ別になんでもないよ!」
何故か胸がざわりとなるのを感じ私はベポのフワフワの毛に顔を埋めた。
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