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「なんでダイヤモンドが……」
私が唖然としているとローさんが腕を組みながら説明してくれた。
「この神殿に来た侵入者をおびき寄せる為だ」
「あー……なるほど。確かに罠っぽい」
人間を釣るにはもってこいの代物だ。
それにしても、と私はまたダイヤモンドに魅力される。
これだけあったら逆に見るだけで胸がいっぱいだから別にいらないけれど、初めて間近で見たたくさんのダイヤモンドはまるで満点の星空を見ているような感覚がする。
「それにしても凄い数……」
壁はほとんどダイヤモンドでうめつくされている。
そんな風に私達がダイヤモンドに気を取られているとペンギンの緊張した声が響いた。
「どうやらボスがご登場のようだぞ」
「……へ?」
私は間の抜けた声を発しながら振り向くと――。
「き、筋肉りゅうりゅうだな……」
「う……うん……」
シャチがひくりと口を引き攣らせる気持ちはよくわかる。
「これは……凄いな」
「俺より大きいよ!」
ペンギンもベポもさすがに驚いている。
ローさんは――。
「………」
何故か無言。
どうしたのローさ〜ん!
なんて心の中で叫んでいる私だって今にも腰が抜けそうだ。
だって、筋肉りゅうりゅうで私達の三倍はある人間が目の前にいるから。
「勇者よ、よくぞ来た」
「「喋ったー!?」」
シャチとハモる。
「あ、貴方はどなたですか?」
「私はこの神殿の番人。そなたを待っていた」
「た、戦わなくていい感じですか……?」
待っていたと言われれば戦闘フラグはないと取っていいのだろうか?
「戦う気はない」
「よ、よかった」
門番の言葉に私は安堵する。
が――。
「試練を受けてもらう」
「え」
なんですって?
シレン?
「試練だよリーシャ」
「わかってるよベポ」
ただ現実逃避したかっただけだから。
「試練とは?」
内心取り乱している私と違い冷静に聞くペンギンママ。
さすが我が家の大黒柱だよ。
「試練とはお前達のことを試しさせてもらうことだ」
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