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「あの猫本当はお前のじゃねェだろ?」
「な!なんで……!?」
驚きに手をパッと首から外した女は後ろへ下がる。
「バレバレなんだよ。どうみてもお前に懐いてなかったしな」
「っ!」
あながち、俺達を見た女は俺と接点を繋ごうと猫を利用したのだろう。
しかしツメが甘かったな。
「演技力は褒めてやるよ……」
皮肉を言うと女はカッと頭に血が上ったようでバッと派手な音を立てて部屋から出て行った。
「……くだらねェな」
俺はこっちが怒りたいと感じながら眠る為に目を閉じた。
***
「あ、おはよーローさん!」
「あァ、上手いかそれ」
「うん!ハムエッグが美味しいよ。ローさんも食べてみる?」
無意識に私はローさんの口元にハムエッグを持っていく、フォークに刺したままで。
「……じゃあ遠慮なく」
一瞬驚いた表情をしたローさんはニヤリと笑ってハムエッグをパクリと食べた。
「あ……私今……!」
やっと自分がやってしまったことに気づき赤面する私。殴り倒したい自分を!!
「気づくの遅いなお前」
実は同席していたシャチ。
ついでにペンギンとベポもいる。
うわ本当に恥ずかしいな私!
チラっとローさんを見ると今だにニヤニヤしてた。
「もうしてくれないのか?」
わかっていて聞いてくるローさんにフォークを突き刺したくなったのは仕方ないと思う。
***
「じゃあ次の場所へ出発だね」
「あァ、前にボス部屋にあったコンパスが鍵だな」
ペンギンがコンパスを取り出しながら説明する。
なんだか本当にリアルドラクエだよ。
「魔王に辿り着く鍵ってことか?」
シャチがコンパスを横目で見ながらペンギンに聞く。
「多分な。とりあえず今はこのコンパスに従うしかない」
「アイアイ!楽しみだね!」
「うん。ベポはその愛らしさがいいよね」
ベポにきゅんきゅんしている私はふとある事を思い出し、ローさんに尋ねた。
「そういえばカリナさんは?」
てっきりお見送りしてくれるのかと思っていたのに。
そんなことを考えていた私にローさんは「忙しいんだろ」と何故か眉間にしわを寄せて答えた。
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