22
ズルズルと引かれること数分、突然ローさんが立ち止まった。
「助けてください!」
女性の声がローさんで見えない前から聞こえてきた。
「どうしたんだろ?……ぶっ!」
横から覗こうとしたらローさんが私の視界を手で塞いだ。
おかげで変な声でちゃったよ。
「もう!なんで塞ぐの!?」
「見たらお前助けるからだ」
「見ないとわかんないじゃんそんなの!」
そうこうしている間に、女性は私達に気が付いたのか声が近づいてきた。
うん、きっとこっちにやってきたんだね。
「……ちっ」
おーい、聞こえてますよ舌打ち。
ようやく手を退けてもらい、状況を把握しようとすれば視界に写るのはこれまた美人な金髪お姉さん。
「助けてください!」
さっき聞いた声で同じ言葉を繰り返す。
「どうしたんですか?」
すると木の上に視線を移動させる金髪美人。
私も視線を動かすとそこには猫がいた。
どうやら降りられなくなったようで立ち往生しているのだと理解する。
「やっぱりな」と呟くローさんを尻目に私はわかりました、と金髪美人さんに言って木に向かう。
その後ろをついて来るローさん。
「じゃ、行ってきます」
「気をつけろよ」
はーいと言いながら木をよじ登る私。
「んっしょんっしょ……!」
なかなかしんどいな木登り。
木登りとか小学校以来だわ。
なんとか猫のいる枝まで到達した私はちっちっと舌を鳴らす。
「おいでー。大丈夫だから……助けてあげ――!」
猫を掴んだ瞬間、バキッと嫌な音がした。
あぁ、なんてベタな展開なんだ。
予想通り枝が折れ、私と猫は重力に逆らうことなく真っ逆さま。
「きゃあああ!!」
死ぬぅ!とか心の中で叫ぶ。
「っ!」
でも痛みもなくすこし柔らかい衝撃がくる。
マットレスに落ちたような。
「たくっ……ハラハラしただろーが」
声がして、目を開けるとローさんの顔が目の前にあった。
「う?」
「う?じゃねェ。この馬鹿が」
「いたっ!」
頭をパシリと叩かれお姫様抱っこの状態から地面に立たされる。
「す、すいませんでした……」
少しだけ怒っているような雰囲気を感じ私はしゅんとなりながら謝った。
すると上から短いため息が聞こえ頭に乗った温かい温もり。
「無事でよかった……」
わしゃわしゃと撫でながら言われた言葉に私は何故か赤くなった。
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