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21


攻撃を開始する四人。

私は見ているしかなかった。

勇者ってこんなものだったっけ?

世界を救うんじゃないの?

疑問と矛盾が頭を堂々巡りする。

ケンタウルスはギャオンと吠えて四人の攻撃を受けていた。





「っ!……やめて!」

私の声に全員攻撃を止める。

「どうした?」

ローさんが眉を下げて聞いてくる。

ケンタウルスはすでにボロボロでもう動けないという状態だった。

その姿に私の心が痛くなる。

無意識にヨタヨタとケンタウルスに近いていった。

「おい、危ねェぞ!」

シャチの静止は耳に届かず私は倒れていて、まだ息のあるケンタウルスの前まで近寄り膝をつく。

ケンタウルスは私に近づかさせまいともう力が残っていない体で手を動かそうとしている。









「――ごめんね」


ポタリ

目から流れた涙がケンタウルスの手に落ちる。


その様子を黙って見ているローさん達。




――パァァァ……!


「……!?」

いきなり光出したケンタウルス。

私は何が起こっているのか理解出来ずにその光景を茫然と見つめた。



すると光は収まり、そこには――。



「嘘……なんで……」


無傷のケンタウルスが立っていた。





「――我が救世主、お待ちしておりました」

「しゃ、喋ったぁ!?」

ケンタウルスが、ギャオンとしか言わなかったケンタウルスが喋った。


「これは貴方様の力のおかげです」

赤い瞳で私を見るケンタウルスは続けた。

「貴方様は特別なお方、痛みを解放する力を備えています」

「痛み……?その傷とか?」

先程まであった傷は一つもなく、何事もなかったようだ。

「はい――貴方様は全てを解放する導く事ができる存在です。私達は、貴方を待っておりました」

「待ってた?」

「これを――」

ケンタウルスは問いに答えず、手を私にゆっくりと向ける。

するとコンパスが現れた。


「導くままに――」

意味深な言葉を残したケンタウルスは私にコンパスを受け取らせるとそのまま背を向けて迷宮の奥へと消えていった。



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