18
おかしいな、なんで私が謝ってんだろー。
先にけなしてきたのはあっちなのに!
と思うが言えないチキンハートな私であった。
「どうやら中は迷路みたいに複雑みたいだな」
「マジか。止めとくか?」
「え〜、冒険の醍醐味なのに!」
「馬鹿言うな。迷ったら魔王倒す前に俺らが死んじまう」
シャチがかなり真面目に説明してきた。
うーん、残念。
がっかりしているとローさんが何やらポケットから赤い塊を取り出した。
「え、い、今どこから……」
「あ?ポケットから出した」
いや、わかってるけど!
「じゃなくて、そんなポケットに入るサイズじゃないよね!?」
そうよく見ればそれは赤い毛糸玉だった。
けっこう大きく、手の平に収まるくらいの物。
「……俺は魔法使いだぞ?」
「あ!そうだった」
すっかりローさんの役職を忘れていた。
「さすが!あ、だったら今すぐ魔王がいる場所へ飛ばしてくれれば……」
「今行っても秒殺されるだけだ」
「うぐ……!」
ペンギンに指摘され私は確かに、と詰まった。
「でもでもペンギン達だけでも戦えば倒せるんじゃないの?」
ペンギンとかベポとか私よりずっとレベル高いし。
「はぁ……今の俺達でもまだ敵わないような相手が魔王だから無理だ」
「どんだけ強いの!?」
今でもって……じゃあ私の道のり長いじゃん!
うわ、気が遠くなりそうだよ……。
「魔王強過ぎ……私勇者とかもう自信なくなってきた……」
しゅんとなった私。
そんな時、ローさんが赤い毛糸を私の手に握らせた。
「何ローさん……」
俯き気味に尋ねるとローさんは私を見上げるようにしゃがんだ。
「いずれの時を想像するな、今ある道を見て進めばいい」
そう言ってポンと頭に乗せられた手。
「っ、わ、わかった……」
この人ただの変態魔法使いかと思えば意外と力強い眼差しを持っているな。
おどおどと戸惑いながら頷いた私にローさんは満足そうに笑った。
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