10
「金目のもん置いていけやァ」
「命だけは助けてやる!」
えー……
今までで一番ピンチかも。
「逃げた方がいい?!」
「いや、相手は山賊。まだ倒しやすい」
「誰と比べてんの!?」
そんな事を言っている間に山賊が襲い掛かってきた。
やだよこんな場所で死ぬとか!
「もう最悪!」
叫びながら私はひたすら相手の攻撃を避ける。
ふと目を横に向けると後の三人は果敢に山賊を蹴り飛ばしていた。
そういえばみんな私よりレベル高かったもんね!
「おい女ァ」
「ひいいい!?」
はい捕まったー!
首元に刀つきつけられてるよ……。
私の様子に気づいた三人はゆっくりと戦うのをやめる。
やめないでよ。
「ハハハッ!話しが分かる奴らだな」
「っ……」
「やっちまえ!」
やめて。
「やめてー!!!」
私は思いっきり頭を後ろに打ち付け男の顔面に頭突きをした。
「ぐっ!」
怯んだ隙に私は三人の元へ全速力で向かう。
「やるな」
「アイ!リーシャすごかったよ」
「勇者らしいな!」
口々に褒められ私は照れる。
「えへへ……」
この世界に来て初めて感じた心から嬉しいという気持ち。
それから私はほとんど庇ってもらう感じで皆はあっというまに山賊を壊滅させた。
よし、今度から隠れるというスキルも身につけよう。
「いや戦えよ勇者!」
勇者じゃないもん☆
シャチの言葉は某お菓子製造会社のマスコットペコンちゃんの如くうやむやにした。
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