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「んんー……はれ……?」
モゾリと起き上がると自室のベットの上にいた。
まだ覚醒しきれていないリーシャはパシパシと怠い身体を揺らす。
「寝ちゃったのかぁ……」
やけに長い夢だなと感じ、テレビに顔を向ければゲーム機が繋いである画面に『エンドロール』の文字が下から動き続いてた。
「ゲーム徹夜でしたからつけっぱなしだった……電気代高そう……いや、怒られるかな」
テレビの電源を切ろうとしたらチャリ、と音がして見下げると首下に一つのクリスタルがあり驚きに息を呑む。
「クリス、タルって――夢じゃないの……?え、本当に!?」
リーシャは信じられない心境で結晶を握る。
と、いうことは――ロー達の旅はただの夢の旅路ではなかったという事なのか。
冷や汗と高揚感が一気に襲った。
その後は、不思議な出来事は記憶に残ったままリーシャは大学生になったが、夢の中の冒険から二年の月日が経過してもクリスタルを見てはロー達を思い出していた。
そして、今現在はというと――入学式から数日たち、リーシャは食堂へ向かい食券を買うところだ。
特に何か特別な事があるわけじゃない。
しかし、彼等との日々は夢ではないんだと信じているからか強く意志を持てている。
自分らしさを感じると言えば良いのだろうか。
それに、現実に向き合えている気もする。
その時、近くにいた女子生徒がキャッキャと何やら話に盛り上がっていたので軽く横目で窺う。
「かっこいい人がさっきいた!」と大声で聞こえてきて、ついハラリと食券を落としてしまった。
下を向けば気怠く拾おうとする。
――と、目に入る刺青のある腕。
「落ちたぞ」
「あ、どう――」
お礼に頭を上げれば見覚えのある顔にリーシャは言葉をなくす。
後ろで「あの人かっこいいんだけど……!」と生徒達が黄色い声を出すのを聞きながら立ち尽くしていれば、ニヤリとあの時から全く変わらない彼の笑み。
「さすがの勇者も驚いて言葉がでねェようだなァ」
「ていうことは、魔王ローさん……?」
「元だ。今は大学生ローだぞ?」
クツクツとおかしそうにリーシャの顔を見るローに信じられないままジッと顔を見る。
そんな非現実的な事が有り得るのか。
夢から飛び出す夢の中の人間がいるなど。
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