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シャチが耐え切れないように叫べばペンギンはグッと押し黙る。



「――ああ。思ってる。毎日毎日、このふざけきった役柄に縛られてる自分が嫌になる。馬鹿みたいにな。もう諦めるしか方法はない。今までだってそうだったはずだ」

「だからもう十分だって言ってんだろ!」



二人で言い争うのをリーシャは静かに傍観する。
諦め、の言葉にローの嘲りに満ちた表情を思い出す。
彼は何を思って自分と旅をし話をして試練を受け笑い牢屋に入れて、キスをしてきたのだろうか。



「俺達は凄ェ苦しんだ!」

「――黙れ!」



ペンギンの突然の激怒にシャチの声が詰まる。
リーシャもペンギンを見た。
ついに彼の感情も崩れたのだろう。
ずっと物静かで毒舌で冷静沈着な人間にも思う事は数えきれない程あったはずだ。











***









リーシャと初めて出会ったのはベポが勇者に同行した後の泉だった。
出来るだけ派手で馬鹿げた風に登場したから彼女はペンギンを変人だと最初に認識した。
自分だって泉のど真ん中から現れればドン引きする。
ベポも唖然と最初していたが喉の渇きに泉の水に視線を戻した。
しかし、ペンギンの存在よりも泉の清潔さが損なわれたと喚くリーシャに少しショックを受けたのは内緒の話だ。
もちろんシナリオに紛れ込む為に仲間の申請をした。
一秒足らずで拒否されたが、きっとリーシャはペンギンを仲間にするだろうと確信する。
あくまでも彼女はただの少女なのだから。
騙すのは赤子を捻るよりもたやすい。
最初の認識はそうだった。
だが、いつからペンギンは旅の中に楽しさを覚えていったのか。
無意識に口元が上がるのを初めて意識した時は内心驚いたし正直とても怖かった。
いつか来る別れと苦しみに怯えたのだ。
きっと、とてつもない罪悪感に苛まれる事になるだろう。
うっとうしくも喜びを感じる内なる感情にペンギンは知らないフリをし続けた。
我慢しないと、耐えないと。
己の課せられた人生を受け入れているのに相反して五人の旅は娯楽と監視を裕に飛び越えた。
由々しき問題だがシャチだって同じ気持ちなら別に自分が悩まなくても大丈夫なのではないかと突き放してしまった。
今思えば、後から帰ってくる問題は役柄のシナリオを優先した時に感情を殺さなければいけない積み荷となったのだ。



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