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シャチは呆然と呟く。
女子会よりもハードかもしれない。
とは言っても女子会を体験した事のないリーシャにはわからないが。
そんな風にだべっているとペンギンが一つの種を落とす様に口を開いた。
「もうすぐ魔王と対決だな」
「………」
リーシャ達はすぐにそうだね、と言えなかった。
軽々しい様な未来ではない事は確かなのだから。
魔王と戦うということは負けるか勝つか。
勝つ気ではいるが、いかせん相手が正体不明の誘拐犯なのだ。
迂闊に突っ込めば何が起こるかわからない。
「決戦前夜か……」
シャチが改める。
ベポもリーシャも頷く。
しかし、ここまで来てシケた雰囲気を持ちたくない。
「皆さ、魔王倒してこの旅が終わった後どうするの?」
急な話にリーシャ以外が目を見開くがベポが先頭を切った。
「俺は皆と居たいなあ」
「バラバラになるつもりはないって事?」
「うん。リーシャと居たい」
「嬉しいや……えへへ」
ベポの言葉は心にじんわりとくる。
次に答えたのはシャチだった。
「旅が終わったらかァ……団子屋は絶対ェしねェとして、カメラマンとかいいかもな」
「エッチなグラビアとか撮っちゃうんだ」
「撮るか!?」
ケラケラと冗談を言えばキレの良いツッコミが来た。
「あのなァ!自然とか、動物だとかだな……!」
「わかってるよ!……ペンギンは?」
三人はペンギンに顔を向ける。
「和菓子職人」
「「「意外!」」」
「でも似合う!」
リーシャはパチパチと手を叩く。
和菓子職人の服を着ているペンギンを想像すれば貫禄が滲み出ていた。
真剣な眼差しと集中力があれば叶わない夢ではないだろう。
「リーシャは?」
「もちろん普通の女の子に戻る事っすよー!」
ベポの問いにリーシャはドンと答える。
お前が女の子?と呟くシャチの足を踏む。
「いでででで!?」
「そりゃそうだって!勇者より一庶民が平凡安泰だもん!」
「まァ妥当だな」
「でしょでしょっ!」
ペンギンも納得してくれたところでリーシャはローがいない事に首を傾げる。
「ところでローさんが来ないね」
「魔王打倒計画を練っているそうだ」
「なぬ!」
そんな事までしてくれているとは思わなかった。
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