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氷の女帝と呼ばれた女性が涙を零す。
ぽろりぽろりと涙する姿はとてもフリをするような余裕もないだろう。
弱みを見せたのは本当に辛いから。
リーシャにも痛みがよく理解出来た。
何かを背負うことは決して楽な事ではない。



「そんなの、当たり前じゃないですか」



リーシャはハンコックが驚きにこちらを見るのを見つめると笑った。



「必ず、貴方達を解放してみせます……頼りないですけどね」



リーシャは照れるように再度笑うと前からクスリと笑い声が聞こえた。
ハンコックが涙を指で拭き取りながら本来の笑顔を浮かべる。
嗚呼、やっぱり美人はこういう表情の方がよく似合う。
リーシャはそう思いロー達を見た。
彼等も勇者と番人のやり取りに毒牙を抜かれたようだ。
ローも「仕方ねェな」とハンコックを許してくれた。



「詫びとは事足りぬが、当分はここへ滞在していくといい。存分に持て成させてもらう」

「積もる話もたくさんありますしね」



リーシャは和やかな気分になった。
決戦間際だというのに可笑しい話だ。
決戦前夜にはきっと気持ちを切り替えなければいけないのだから構わないだろうと自己完結する。
それからは九蛇と言われる女性達が宴会の席を用意してくれ、あのマーガレットの姿も見付けた。
女性のみで男が一人もいなくて正にハーレム。
シャチ達が終始鼻の下をデレデレと伸ばしていたので足を踏んでおく。
ベポは基本メスの熊にしか興味がないので安心できた。
ローは元から興味がなさそうにお酒を飲んでいてある意味感心したが。
ハンコックが豪華な料理を運んでくるように伝えるとすぐに熱い湯気が立ち上る出来立てが出て来た。
これは何かとマーガレットに聞くと「ゴルゴンゾーラ」だと言われてイタリア料理かと口に入れたがとにかく美味しい。
シャチもペンギンまでもが酔い潰れたのにはびっくりした。
後で九蛇が運ぶと言ったがローが魔法で二人を自室に運んだ。
内心女性達に運ばせるのは忍びなかったし凄く癪だったのでナイスだと思った。
明日からかいに行こう。
綺麗な女性に囲まれると男女関係なく癒される。
お酒は飲めないが話し掛けられるのは良い気分であった。



「ふぁぁ……」

「もうこんな時間か。眠たいのなら就寝してくるがよい」

「リーシャ、俺をこいつと二人きりにするな」

「俺もいるんだけど……」



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