07
「……私の賞金稼ぎとしての初めての仕事はあんただったんだ…」
「それは相手が悪かったな」
「そうだったん……って自分で言うな!」
「それで?」
「スルーされてるし……それで初仕事で負けて悔しくて悔しくて、あんたに絶対勝ってやるって思ってここまで追い掛けてきたんだ……」
「なるほどな、だからあそこまで俺に執着してたんだな」
俺がそう言うとリーシャは前を向きながら目を細めた。
俺はいままでこいつの怒った顔とほうけている顔しか見たことがなかったからリーシャの目が悲しそうな色をしていることに驚いていた。
俺がそんなことを考えていたらリーシャがポツリと呟いた。
「もう潮時なのかもね…」
あまりにも声が小さかったため俺には全く聞こえなかった。
「なんだ?もう一度言え」
「…………」
「……おい」
返事がないので顔を覗き込めば、案の定リーシャは寝ていた。
「はぁ……寝てんのかよ……」
俺はこいつの酒代を払うとリーシャを抱えて店を出た。
「まったく……世話のかかるやつだ……」
それから俺はリーシャを抱えたまま船へ戻り自分の部屋のベッドの上に寝かせる。
リーシャはまったく起きる気配がなかった。
「ククッ……お前本当に賞金稼ぎかよ……」
まぁ、賞金稼ぎを自室のベッドへ寝かせている俺も俺だがな。
無防備に眠っているリーシャの前髪を上に上げると俺は静かに額へキスを落とした。
(君が知らない俺の秘密)
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