32
トラファルガー・ローに安静にしていろと言われ、一応医者の腕はかなりいいことをリーシャは知っている為、しゃくだが言うことを聞いてベッドへ寝ていた。
横になって随分たつ。
やることもできない私は体がなまりそうでむず痒い。
「ひまぁ〜……」
つい一言を誰もいない空間に向かって言う。
「暇?ならちょうどいいな」
「!?」
バッと扉の方へ顔を向けると私に、昼時に安静を言い渡した死の外科医がいた。
「なに!いつの間に?」
「今来た」
「ノックは!?」
「海賊にそんな常識を求めるな」
「その前に人間でしょ!」
この野郎、と内心罵る。
「フフ、喜べ。夜ばいしにきてやった」
「上から目線ってところから、お断りします」
「つれないことを――」
「そういう意味に取るな!」
なんてポジティブな奴だ。
夜ばいだなんて頭大丈夫か。
「ねぇ、いつになったら出歩ける?」
「明日には歩いて構わない」
「ふ〜ん……じゃあ明日船降りるから」
「どうやってだ?」
ローの言葉にリーシャは気づく。
そういえばこの船は進行していた。
だから帰る方法がないと言っているのだろうと考えた。
「――泳いで」
「クッ……あほか」
「うっさい!泳ぐもんは泳ぐのっ!」
馬鹿にされ、リーシャは赤くなる。
「――じゃあお前が泳がないように縛り付けておこうか」
「……はっ?」
聞き間違いかと、眉間にシワが寄ったリーシャはローを見る。
「二度は言わねェ」
「!――ちょっと!」
いきなりリーシャに跨がってくるロー。
リーシャはローを押し返そうとするが、熱の余韻で弱った体ではどうにもできなかった。
リーシャが奮闘している間にもローはリーシャの手をベッドへ縫い付ける。
(正気……!?)
「へ、変態!なにすんのよ!?」
危険を感じたリーシャは叫び、力のでない体を暴れさせる。
「病人なんだぞ。暴れんじゃねェ」
「誰のせいだと思って!」
リーシャが反論しようと言葉を返した時、ローは黙れ、と言うようにリーシャにキスをした。
(息もままならない)
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