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俺達は海賊だ。
だから略奪や殺し、そんなイメージを普通の人間は持っている。
もちろん嘘じゃねェ。
だが俺達が殺すのは相手がやってくるからであって正当防衛だ。
海賊がそんなことを言う権利なんてないがな。
それに略奪は、食料がなくなるとゆう危機に見舞われた時だけであってごく稀だ。
稀のはずが今その食料危機に悩まされていた。
***
「船長どうしますか」
「止むおえねぇな…」
「じゃあクルー達に伝えてきますね」
ペンギンはそう言うと俺に背を向け去っていった。
航海の期間と食料の量が合わなかったことで、あと少しで食料が底を尽きかけていた。
となれば、海賊である俺達がすることは一つ。
「船長ー!東の方角に一隻の船を確認しました!」
略奪だ。
クルーの声に俺は甲板へと足を動かした。
***
「この船に金目のもんなんてない……」
「俺達は金目の物が欲しいんじゃねェ。お前らの分の食料は残しておく。だが、後は全てもらう」
簡潔にそう言うと俺はクルーに指示し、船を調べさせる。
しかし、妙だ。
俺はこの船に乗っていた男を見る。
海賊船が来るまでに逃げればいいものを、この船はずっと前へ進んでいた。
まず、見張りもいなかった。
グランドラインを渡るには、それなりの覚悟や神経がいる。
特に見張りはいなくてはならないもの。
なのに全く周りにすら人がいなかった。
どういうことだ?
俺がそんな疑問を浮かべている時だった。
――バァン!
突然、船にある中へ入る扉が勢いよく開いた。
それにクルー達や俺も身構える。
「……あんた、たち……その人に、手を……出したら、許さ…ない……からっ!」
そんなロー達の前に姿を現した少女。
「!!……、リーシャっ!?」
シャチの驚いた声を聞きながら、ローは苦しそうに壁に佇んでいるリーシャを茫然と見ていた。
「なんでリーシャが……!」
ベポ達が目を見開いているのを見ながらリーシャはなおもロー達を睨みつけていた。
「この人達にっ、触れるなっ……!」
リーシャの息苦しい声が響く。
その時、縛りつけていた男が焦ったように口を開いた。
「リーシャちゃん!動いたらいけない!まだ熱が……!」
その男の言葉にローは理解した。
今、彼女は熱に侵されているのだと。
(偶然すぎる出会い)
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