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「俺がやると思うのか?」
「思いませんね」
まぁ、返事はわかっていたが。
俺と船長が雪投げをしているクルー達を見ているとふいにもう何年も慣れ親しんだ声が響いた。
「トトト、トラファルガー・……ローっ……!」
だがその声はいつもよりも震えていた。
「………」
「……一応聞いておこう、大丈夫か?」
「そそ、そんな気づかいむむむ、無用よっ!」
リーシャは遠くから見ても服を大量に着込んでいるのがわかり、俺は苦笑いするしかなかった。
「お前……いつの間にそんなに太ったんだ?」
「太ってなな、なんかないわよよっ!」
船長の嫌味ですらまともに返せない程寒いんだな……。
するとリーシャの声に気が付いたクルー達がリーシャの格好を見て笑い始めた。
「ぎゃはは!なんだその格好は!」
「そんなに着込んで暑くないのリーシャ?」
「シシ、シャチうっさいぃ!ベポは優しいねぇ〜。つつ、ついでにいうと、全くまぁ〜ったく暑くないよよよぉ!!むしろまだ足りないから!」
リーシャはそう叫ぶとこんな島とっとと出て行きたいと言ってがたがた震えていた。
「おいおい、さすがのリーシャも今回はお手上げじゃねェか!」
「……!」
シャチ言葉にリーシャの纏っている空気が変わった。
「な、んですって?」
「あ?だからさすがのリーシャも……、ぶっ!」
そんな空気に気づかないシャチはリーシャにまたさっきの台詞を言おうとするとリーシャに雪球を顔に投げつけられ見事に命中した。
(あいつも馬鹿だな)
負けず嫌いなリーシャにあんな事を言えばどうなるかなんて想像できたはずだ。
俺はため息を付きながら隣を見ると、愉しそうに口角を上げた船長がリーシャを見ていた。
(こっちもか……)
俺は船長の機嫌の良さに毎度の事だと感じながら前を向く。
「このこのこのこの!!」
「はっ!私には当てられないわよ!」
「わぁ、リーシャ避けるの上手だね!」
いつの間にかリーシャもクルー達に混ざって雪合戦を始めていた。
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