19
クルー達が十分に酔っ払って寝ている間、俺とリーシャは互いに無言で飲んでいた。
「………」
「なんで私があんたと飲まなきゃなんないのよ……」
リーシャがぽつりと愚痴を漏らす。
「フ、諦めろ」
俺はリーシャの文句をいいたげな顔を見ながら言った。
「はぁ……いつの間にか、ね……」
「何がだ」
リーシャの言葉に俺は意味がわからないという顔をした。
「馴れ合い過ぎたっていうことよ……」
リーシャがそう言った瞬間、密かに瞳が淋しげに揺れたような気がした。
「……今更だろ」
「まぁね」
俺がそう言うとリーシャは何事もなかったかのように顔を上げた。
「………」
「………」
無言の空気が辺りを包んだ。
「……そーいえばさ」
リーシャの言葉に俺は顔を横に向ける。
リーシャは少し躊躇しながら口を開いた。
「懸賞金が、上がったんだってね……」
「あァ、リーシャがいねェ間に一騒動あったんだよ」
「……ふーん」
「なんだ?反応がわりィな」
「……別に」
私が下を向きながら言うとトラファルガー・ローは足を組み直す。
「二億か……」
「………」
俺がそう呟くとリーシャはバッと顔を上げた。
「私帰るね」
リーシャはそう言うなりスタスタと歩いて行った。
「……おい」
俺が呼び止めるとリーシャはこっちを見ないまま立ち止まる。
「……なに?」
「お前が構わねェなら、俺の……」
俺は途中で言葉を止めた。
「……いや、やっぱりやめた」
「……なにそれ?まぁいいわ。じゃ、私は行くね」
リーシャはそう言うと店を出て行く。
「………」
俺はリーシャを目で見送った後、グラスに入っている酒を一気に飲み干した。
(その言葉を言ってしまえば何かが崩れ去るような気がした)
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