Scene_2



ナミが隣の家に来たとき、ロビンは10歳だった。

どちらかといえばさめた子どもだったロビンは、赤ん坊にさほど興味があったわけではない。

それでも、家族ぐるみで付き合いのあった隣の家に赤ん坊が来るとなれば、ノジコのときと同じように、自分が世話係になるのは必至。

溌剌としている隣家の女性は農作物の研究をしているらしく、日中は働きに出ていたから、ノジコが養子として迎え入れられたときも、母親が帰ってくるまでの時間はロビンが面倒を見ることが多かった。

ロビンの母親も仕事で帰りが遅いことが多かったから、今日のようにロビンが夕食を用意することも、子どもたちだけで食べることも、平日は殆ど毎日だった。

それはロビンが社会人になってからも続いている習慣。

ノジコがひとり立ちした今は、ナミとふたりだけの夕食が続いている。

最初は、妹の面倒を見る、そんな義務感だったはずのに。

「ロビンは過保護過ぎるのよ」

独り言のように、少し先を歩くナミが言う。

過保護。

もっともな評価だなと思って、ロビンは気づかれないように小さく笑った。

笑ったのがばれたら、またナミを怒らせてしまうだろうから。

「あたしだって、来年から大学生なのよ」

そう、18年。

幼馴染として、18年の長い年月をともに過ごしてきたふたり。

その年月の中で、いつからロビンの想いだけが、姉妹として向けるべき想いの境界を飛び越えてしまったのだろう。

18年のうち、ナミが妹であった期間は何年だったのか。

ナミが妹でなくなってからは何年経ったのか。

少しでも気を抜けば、この胸からあふれだしそうなほどにナミへの想いが大きくなった今では、そんなこと、考えるのも不毛だ。

「志望校だって、ここからは遠いんだし」

てくてくと、等間隔に街灯が設置された住宅街をふたり、歩く。

両脇に建ち並ぶ家々に明かりはともされているけれど、夕食時を過ぎたからか、それぞれの家庭のにぎわいは耳に届かず、街は静かだ。



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