Side_Nami_4
ああ、もう……
ほんとうにあたしたちは、どうしようもない。
なんて、残酷なひとなんだろう。
なんて、自分勝手なひとなんだろう。
いっそ、拒絶された方が楽だった。
力でナミをはねつけるなど、このひとは簡単にできるのに。
力をふるわなくても、「やめて」とひとこと言ってくれれば、それでよかったのだ。
ウソでも強がりでもなんでもいいから、「あなたなんて嫌い」と告げてくれればよかったのだ。
それさえできないなんて、ほんとうに、どうしようもないひと。
『あんたの何もかもを奪ってやるわ』と、そう言ったのはナミだった。
『時間も、気持ちも、奪うだけ奪って、あんたを離さない』と、そう言ったのもナミだった。
その言葉通り、ロビンの心はナミに向けられているのだとナミは確信していたし、ロビンもそれを否定しなかった。
ロビンの表情から、声音から、仕草から、体温から、鼓動から、あふれだしては伝わる想いをすくいあげるのがたやすかったのは、ロビンがそれを隠そうとしなかったからだ。
そして、心だけでは飽きたらず、体さえも奪った。
けれど、何もかもを奪われてつなぎとめられ、離れられなくなったのはナミの方だったのだ。
なんて、どうしようもない自分。
もはや、何故こんなにもロビンに惹かれているのか、自分でも説明がつかなかった。
正直、ものすごく頭にきているし、傷つけられているし、痛いぐらいにさみしいし、こんなひと、これ以上想ったってしょうがないのだと、自分でわかっている。
ロビンが何を想っているのか、その正確なところはわからないけれど、ただ確かなのは、ロビンにはナミの想いを受け入れるつもりはまったくなくて、いつかロビン自身が言っていたように、ひとりになったときのために頼りになる思い出を、無様にかき集めているだけ。
20年もいろいろな場所を渡り歩かなければ生きてこられなかったロビンにとって、ひとところにとどまるということを信じきれないのはわかる。
信じるのが怖いのも、わかる。
だからって、こんなのはあんまりだ。
信じきれないのなら、曖昧な態度をやめればいい。
いつかひとりなると思い込んでいるならば、未来を信じられないと、そう言えばいい。
あなたを信じられないのと、はっきり言えばいいのだ。
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