Side_Robin_1



夢を、見た。

青キジに、この船が凍らされる夢。

夢の中では、ロビンを除いたクルー全員が凍らされた。

たいようのようにいつも明るく道を指し示してくれる航海士さえも、その氷にあらがうことはできなかった。

今更、思い知らせる必要なんてないのに。

ちゃんとわかっている。

生きることさえ許されなかった自分に、笑うことなど許されるはずがない。

目的のためには他人を踏みつけにすることもいとわずに生きてきた自分に、誰かに想ってもらうことなど許されるはずがない。

そんなこと、ずっとわかっていた。

だから、わざわざ夢に見せることなんてないのにと、そう思わずにはいられなかった。

20年前のあの日、オハラは業火に包まれ何もかもが焼き尽くされたけれど、夢の中のロビンの前には、厚い氷の中に閉じ込められたみなの姿があった。

凍りついたメリー号と、氷の中で時を止めてしまったクルーたち。

その光景の前で、ロビンは茫然と立ち尽くすことしかできなかった。

でも、そんなロビンをすくいあげるように、名前を呼ぶ声が聞こえて。

記憶の中の、母の声とは違う。

20年前のあの日に死んでしまった母が、ロビンの名前を呼ぶことは、二度とない。

でも、母の他に、ロビンの名前をやわらかく呼んでくれる声があっただろうか。

そう思いながら、確かめるように目を開けた。

見慣れた天井。

耳に届く波音。

一定のリズムで体が揺れるのは、この場所が波に揺られる船の上だから。

そう。

ここはロビンのあこがれたすべてが詰まった船。

ゆっくりと現実に戻る中で、額に触れるあたたかな感触があった。

壊れ物を扱うような繊細な動作でロビンの前髪をかきあげた手の持ち主を、警戒する必要はないのだと、ロビンは見なくとも知っている。

天井からその手の持ち主に視線を移すと、ロビンの顔を心配そうに見下ろすふたつの瞳を見つけた。

ロビンはロビンを映す瞳の持ち主に、そっと手を伸ばす。

そうして存在を確かめるようにつぶやいた。

『ナミ』と。



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