Side_Robin_3



『好きよ』とその想いを伝えてもらえるほどに、航海士に近づくつもりはなかった。

今更そう思ったところで何にもならないことはわかっているが、自分の軽率さを悔いないわけにはいかない。

航海士とロビンは同じ気持ちを向けあっているのだと、ほとんど確信していたけれど、ロビンはいずれこの船を降りなければならない人間だ。

ロビンを追い続けてくる世界の闇が、いつこの船をのみこもうとするかわからない。

麦わらの一味の知名度も上がり続けている今、それはそう遠くない未来のようにも思える。

確かにロビンは、麦わらの船で数々の奇跡を見てきた。

麦わらの一味は、七武海の一角を崩して砂漠の国を救った。

次の航路で実在するかどうかもわからない空島にたどりついただけではなく、空島を偽りの神の支配から解放し、四百年間続いた争いにも終止符を打った。

そのうえ、ロビンは新たなポーネグリフの手がかりを見つけ、真の歴史を紡ぐために、自らが最果ての地、ラフテルに行かなければならないのだと知ることができた。

麦わらの船は、ロビンの心をあたため、とかし、すくいあげてくれただけでなく、夢まで取り戻してくれたのだ。

それだけで、十分すぎるほど。

でも、どんな奇跡が起こったとしても、ロビンを追ってくる強大な闇にかなうとは思えない。

ロビンを追いかけてくる闇に、この船のクルーたちを傷つけさせるわけにはいかない。

だから、そう遠くない未来にこの船を降りなければならないのだと、ロビンは自分に言い聞かせてきたのに……

ロビンは何度も見てしまった。

その奇跡の中に必ずあった、クルーたちの底抜けに明るい笑顔を。

麦わらの船にはいつも、泣きたくなるくらいに無垢で、強い輝きを放つ笑顔があった。

その笑顔は、ロビンの心に希望の波を届け続けていたのだろう。

ラフテルまでこの船で行けるなんて、思っていなかったはずなのに。

ラフテルへ連れていってなんて、そんな願い、抱くはずもなかったのに。

どこかで期待していたのだと思う。

この船に、ずっといられるのではないか、と。

この船に乗り、航海士に導かれ、共に最果ての地まで行けるのではないか、と。

なんて、おろかしいのだろう。

今、青キジに再会したことは、ある意味では幸運だったのかもしれない。

淡い期待を捨てきれずにいた自分は、その期待を打ち砕かれることでしか、この船を去る決意を固めることができなかっただろう。

勘違いするな。

おまえの居場所は、そんなにあたたかな場所ではない。

この船を傷つけないために、そう知らしめられる必要があったのだ。

ロビンの居場所はいつも、世界の闇とともにある、凍えるほどに寒く暗い場所だった。

青キジはそこに、ロビンを引き戻しにきたのだ。



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