Side_Nami_2



ロビンが目を覚ましてから2日目。

なんとなく眠れずにいたのと、いつもはふたりで寝ているベッドにロビンをゆっくり眠らせてあげたかったこともあって、ナミは停泊しているメリー号の夜の船番を申し出た。

男性クルーたちはデービーバックファイトというバカげたゲームで負う必要のない傷を負った上に、青キジとの一件でも怪我をしていたから、ナミが船番をすることは不自然ではなかったはず。

それなのに、船室へのドアが開く気配に気づき、立ち上がって見張り台から見下ろすと、ふらりと甲板に姿を現したロビンが視界に映りこんだ。

前からきゃしゃで繊細なひとだったけれど、青キジに再会してからはその雰囲気がいっそう強まってしまった気がする。

もちろん、一度仮死状態にまでなったのだから、やつれて当然といえば当然なのだが、それ以上にロビンから何かが欠けてしまった気がして不安になるのは、同じ目にあった船長の人間離れした回復力のせいばかりではないはずだ。

「ロビン、どうしたの?」

声をかけると、ロビンはナミの方を指差した。

上がってもいいかと問われているのだろうか。

「待ってて。今、降りるから」

でも、病み上がりのロビンにあまり体力を使わせたくなくて、ナミは梯子に手をかける。

8歳からいろいろな組織を渡り歩いてきたロビンには、本調子ではないままに動き回らなければならない状況なんて、それこそうんざりするほどあったに違いない。

けれど今、ロビンがいるのはメリー号だ。

たとえ過保護だとか過干渉だとかロビン自身に思われてしまったとしても、もう、20年分あまやかし尽くしてしまいたい気持ちが、青キジの件があってからいっそう強まったように思う。

そう、これはもう、優しさとか気遣いとか、そういう次元を超えた一種の衝動なのだ。

ナミがロビンを見ていたいとか、ロビンの声を聞きたいとか、ロビンに触れたいとか、それと同じ本能的な次元で、ロビンをあまやかしたい。

でも、ロビンはナミが降りようとしたのを手で制すると、梯子に手をかけてのぼり始めてしまった。

今までもナミが船番のときに、あまり眠ることが得意ではないらしいロビンが暇潰しに来たことはあるから、初めての状況ではない。

あたたかなコーヒーを飲みながらたわいもない話をして、そのうちにロビンが隣にいることの心地よさからナミがうっかり眠ってしまい、ロビンが代わりに船番をしていたことさえある。

それでも胸は騒いだ。

この船を降りたいと言い出すんじゃないか、と。

もうこの船にはいられないと言い出すんじゃないか、と。



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