Side_Robin_4
「明日は昨日言ってた遺跡に行くの?」
買い物が済むと、船に帰る前にお茶をしようという航海士の提案で、ふたりで船への帰り道にあったカフェに寄った。
「そのつもりよ」
服を購入したうえに、数冊の本を買うことも許してくれたのは、買い物に付き合ったロビンへのごほうびなのだろうか。
荷物持ちにさせられた船医が、買い物の終わりに医学書を買い与えられている姿を何度か見ているロビンは、少しだけ複雑な気持ちになる。
けれど、問いかければまた航海士の機嫌を損ねるような気がしたから、何も言わなかった。
航海士はアイスクリームと生クリームがこれでもかというほどに積まれたパフェを口に頬張り、表情が明るくやわらいだところだ。
こういう風に、感情のまま、素直にころころと表情が変わるところもまた、いとしく思う。
「あたしが思うにさ」
航海士はパフェ用の小さなスプーンを、ロビンの方にぴしっと向ける。
「空島から帰ったあとから、ちょっと変わったよね」
「……そう?」
ロビンはコーヒーを口に運んでから、そう答えた。
特に自分としてはクルーたちに対する態度を変えたつもりはないし、ついつい航海士を気にしてしまうのは空島に行くよりも前からのことだから、変化とはいえないだろう。
ただ、もしかしたら、だんだんと隠しきれなくなってきているのかもしれない、とは思う。
いや、隠しきれなくなっている、というのは正確ではないのかもしれない。
隠したくない。
見抜いてほしい。
問い詰めてほしい。
ロビンが想いを吐露せざるをえないところまで。
ロビンが航海士にすがらないではいられないところまで。
そう願う気持ちが、ないとはとても言えない。
同時に、どこまで心を見透かされても、ウソを貫きとおす覚悟も決めていた。
最後まで、「好き」だなんて口にしないと決めている。
なんてずるい人間。
なんて卑怯なおとな。
そうわかっていてもどこへも動き出せないのが、ロビンの航海士への想いだった。
「うん。なんかさ、考古学の本を読んだり、遺跡に行くってときのロビンが、前よりはりきってる気がするんだよね。気合いが入ってるっていうか」
「……そう、かもしれないわね」
そちらの方か、とロビンはほっとすると同時に、少し落胆してもいた。
確かに、そういう意味ではロビンは変わったかもしれない。
ロビンは空島でポーネグリフを見つけ、一度は失った夢への道を取り戻したのだから。
「なんかあったの? ま、無理に話せとは言わないけどさ」
そう言いながらも、航海士は少しさみしそう。
「別にかまわないわ」
その姿を見て募るいとしさを振り切るように、ロビンは小さく首を横に振った。
「ポーネグリフをね、見つけたの」
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