Side_Nami_5



ナミは再び手を伸ばし、ロビンの長いまつげをそっとなでてみる。

指に触れるかすかな感触が、こそばゆい。

「……なあに?」

ロビンは今度は苦笑しながら、ナミの方へと顔を向けた。

指が目に入りそうになって、ナミは手を下ろす。

こんなにきれいなものを、傷つけたりしたくない。

「ロビンってさ、まつげ長いよね」

「そうかしら?」

「うん、長い」

ナミはこくりとうなずく。

「あなたも長いわ?」

ロビンはそう言って本を閉じた。

ようやくかまってくれる気になったらしいと、少しだけうれしくなったなんて、絶対に言ってやらないけど。

「長さでも計ってみる? どっちが長いか」

「それは、楽しいの?」

「わかんない」

ナミは肩をすくめて、短く息を吐いた。

「いいよ、本見てても」

そうして、心にもないことを言ってみる。

ロビンがどう反応するか、気になって。

「そうしたら、あなたはどうするの?」

「あたし? あたしはロビンを見てるよ」

「……」

にっと笑って言うと、ゆっくりと逸らされてから、伏せられる瞳。

「訊かないの? それは楽しいのかって」

ロビンは視線を落としたまま、頭を小さく横に振った。

「訊いてほしかったのに」

ロビンはテーブルの上のコーヒーを手に取り、口もとに運ぶ。

「ロビンは今、何を飲み込んだの?」

けれどそんなのはごまかしだと、ナミはもう知っているから、問い詰める。

「何って……コーヒーを」

「コーヒーと一緒に、なんか別なのも飲みこんだんじゃないかと思って」

「これはブラックよ。砂糖もミルクも入っていないわ」

ほら、とでもいうように、ロビンはナミにマグカップを差し出す。

「そういうことじゃなくてさ」

ナミはロビンが握っていたマグカップを、ロビンの手ごと自分の口もとに引き寄せた。

「にが……」

舌に触れるのは、あまり得意ではない酸味と苦味。

コーヒーを飲むときはたっぷりミルクをいれるナミが飲むものとは、まったく別の味だ。

「あんた、いつもこんなに濃いの飲んでんの?」

それにしても、あんまり濃すぎるのではないか。

飲みすぎなくても、胃を壊してしまいそうだ。

「……そんなに濃いかしら?」

ロビンがそっと手を引っ込めようとしたから、ナミはその手を引き寄せて、もう一口、コーヒーを口に含んだ。

「やっぱ、にがい……」

このビターさも、初恋のようなこの恋ゆえの、攻防戦。

そう思って、ばかなことを考えたな、と自分でおかしくなってしまった。

ナミがいつまでもロビンの手を離さずにいると、ロビンはどこか困ったような、落ち着かないような、そんな様子で視線を泳がせていた。




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