Side_Nami_2



あのとき、空島で過ごした最後の夜。

神を名乗って空の島を長い年月支配したエネルが敗れ、スカイピアが解放されただけでなく、長い間対立関係にあった空島の人々とシャンディアたちの、400年にわたる争いに終止符が打たれ、島は喜びに満ちていた。

ルフィたちが始めたキャンプファイヤーだったけれど、ひとり、またひとりと参加者は増え続け、いつの間にか空島に生きるすべての人間が集まってきたのではないだろうかと、そう思えるぐらいの大騒ぎになっていた。

黄金がなかったことにはがっくりきたけれど、まあいいか、と思えた。

ロビンは逃げたり姿を消したりせずに、ナミや他のクルーたちを助けてくれたから。

ナミや他のクルーたちを、信じてくれたから。

それどころか、雷に打たれたくせに、空の騎士やゲリラまで助けていて、きゃしゃな体に隠された意外な頑丈さに驚いたくらいだ。

……ほんとうに、ロビンがエネルに雷で攻撃されたときには、自分の方が倒れるかと思ったのだ。

確かにロビンは悪魔の実の能力者で、賞金額はゾロより高いし、強いことは強いのだろうけれど、ナミの前ではふつうの穏やかな女の人だったから。

いつも瞳に悲しみをたたえながらも、穏やかに微笑んでいる人だったから。

何より、ナミが他の誰よりも大切にしたい特別な人だから。

正直、気が動転して、もうどうしたらいいのかまったくわからなかった。

けれど、そんな状況であったにもかかわらず、エネルの船に乗せられたナミをルフィが助けにきたのは、ロビンが「航海士さんが連れていかれた」と説明したからなのだと、あとから知った。

ナミはあのとき、雷に打たれたロビンたちや空の騎士、ゲリラの姿にすっかり気持ちを折られてしまって、どうしたら切り抜けられるか必死に考えた結果、当然ながら本意ではなかったとしても、「連れていってください」とエネルに言ったのだ。

「あなたについていきます」と。

それを、あのとき倒れていたロビンが聞いていたかどうかはわからない。

でも、どちらにしても、ロビンはナミを信じたのだ。

連れ去られたにしても、ついていったにしても、ナミが自らの意志をもって、エネルに従ったのではないのだ、と。

そう理解したときにはもう、うれしくてうれしくて、胸からじんわりしみだしては広がっていくあたたかなよろこびをどうすることもできなくて、さけびだしたくなった。

いつか、ロビンに気持ちを伝えられないことが苦しくて苦しくて、慟哭するように叫び出したくなったことが、ウソのようだ。

そのうえロビンは、傷を負った体でゾロとチョッパーを遺跡の上層に運んだだけでなく、空の騎士やゲリラまで助けている始末。

そのやさしさはどういうつもりかと、問い詰めてやりたいぐらいだった。

そんなにやさしくて、どうやってこの海をわたってきたのか。

そんなにやさしくて、どうやって20年間も政府から逃げのびてこられたのか。

そんなにやさしくて、この船以外で、ナミの隣以外で、この海を渡っていけるとでも思っているのか。

そう問い詰めてやりたかった。

このかわいいやつめ、とぎゅうぎゅうに抱きしめて、答えたって離さないでおきたかった。

でも、行動に移すわけにもいかないから。

うれしくて、子どもみたいに声をだしながら走り回りたくなるぐらいのいとしさは、すべて宴にぶつけてしまった。

飲んで、歌って、踊って、昇華させるしかなかった。

あんまりうれしくて照れくさいから、宴の最中はにこにこしているロビンの隣に行くことさえできなかった。

そうして気持ちよく酔っ払って、騒ぎ疲れて、自分には珍しく、そのままばたりと夢の世界に沈みこんだ。

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