Side_Nami_1



あたしとしたことが、とあれから何度思ったことだろう。

思い出すたびに、自分のふがいなさが悔やまれる。

その大元の原因であるところのロビンは、ナミのすぐ隣でいつものように本を読んでいた。

本日は晴天。

立ち寄った島は春島で、風は穏やかに肌をなで、やわらかな陽射しが体をあたためている。

読書にも昼寝にも最適な日和だ。

男性クルーは探検やら食料調達やらで島に繰り出し、メリー号にいつもの騒がしさはない。

船を心地よいリズムで揺らす波の音と、近く、遠くで鳴く海鳥の声が聞こえるだけ。

ナミも測量のためにいったん島へと降りたけれど、人の住んでいた気配はなさそうだからと、ロビンは船番を申し出た。

もしも遺跡があったら教えてね、とナミに告げて、ロビンが甲板の定位置にあるデッキチェアに腰を下ろし本を開いたのが、ナミが船から出かけるとき。

船に戻ってきた今も、ロビンはそのときの姿勢のままで隣にいる。

一応ちょこちょこ動いてはいたらしい、ということは、テーブルの上に何冊か積まれている本と、まだほのかに湯気をたてているコーヒーが教えてくれた。

小さな島の測量を終えて一息ついたナミが、キッチンから持ってきたオレンジジュースが同じテーブルの上に並んでいる。

その測量だって、少しでもロビンと静かに過ごす時間が欲しいから、急いで終わらせてきたというのに。

そんなけなげな自分に少しは気づいたらどうか、と思ったところで、活字中毒遺跡バカであるところの考古学者は、今は本に夢中。

ナミが視線を向けても、一向にこちらに気を払いはしない。

ねえ、どういうつもりだったの?

ねえ、何を言いたかったの?

尋ねるチャンスはあのときだけだったのに、と思う。

ロビンの『ほんとう』に触れて、距離を縮めるチャンスはあのときだけだった。

それなのに、自分ともあろうものが、身動きひとつ取れなくなってしまうなんて。

そのせいで、ロビンがはじめてナミに伝えようとした『ほんとう』の言葉を聞き逃した。

ロビンの凍りついた心の岸辺にたどりついて、とけた氷の壁の向こうに見つけたこわがりなロビンが、やっとナミに伝えようとしてくれた言葉を聞き逃してしまった。

あたしとしたことが、ほんとうに情けない。

[ 41/120 ]

[*前] [次#]
[目次]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -