Side_Nami_4



言ってしまいたい。

ナミにとって、ロビンは特別なのだ、と。

訊いてしまいたい。

ロビンにとって、ナミは特別なのか、と。

でもそれは、百パーセントの確信がなければ言えないことだった。

そのナミにだけ見せる特別な表情は、ロビンにとってナミが唯一の女性クルーだから、同性であるという理由だけで、うちとけてくれたロビンが見せるようになった表情なのかもしれない。

これまで短いながらもふたりだけでいた時間や、ジャヤで見せた涙の影響がないとは思わないけれど、それはナミが同性で、単純に一緒に過ごす時間が他のクルーたちより多いから、見せてくれるようになった表情なのかもしれない。

だからロビンは、今までナミと過ごしてきた時間の総和と、これからこの船のクルーたちと過ごす時間の総和が等しくなった時点で、やっとナミに向けてくれるようになった『ほんとう』の笑顔を、同じようにクルーたちにも向けるのかもしれない。

「なくなったら呼んでくれよ〜」

サンジは来たときと同じように、浮かれきった調子でキャンプファイヤーの輪の中に戻っていった。

……いや、百パーセントで確信したって無理なのだ、とナミは思う。

たとえばロビンがナミのことを、ナミと同じような意味で好きでいてくれたとしても、その気持ちを告げた瞬間、ロビンとナミが築き上げてきた時間も、共有できるようになった優しい時間も、崩れるに違いなかった。

それほどに、きっとロビンは臆病だから。

他人を傷つけることを、誰よりも避けるロビンだから。

ロビンが何を背負っているのかはわからないけれど、8歳のときから20年間、政府から逃げ続けてきたロビンの過去が、ロビンをとても怖がりにしてしまったことだけはわかる。

ルフィの話からすると、4年間バロックワークスという組織の重要なパートナーであり続けたクロコダイルからも、最後には裏切られたようだった。

そしてロビン自身も、最初からクロコダイルを信用していたわけではないらしいことは、結果的にルフィとビビがクロコダイルに打ち勝ち、砂漠の王国を取り戻したことからも容易に推測できる。

ロビンの自分の組織の首をしめるような裏での行動がなければ、砂漠の王国の反乱を止めることはできなかった。

だから、ロビンにとっては、相手の嘘も裏切りも、自分の偽りも裏切りも、間違いなく起こる必然のこと。

ロビンが怖がっているのは、たぶん、それ以外のすべてのことなのだろう。

もちろん、新しい『仲間』に裏切られることも嫌には違いないが、ある意味それは、ロビンにとっては想定内の出来事。

だから、それ以上におそれていることがロビンにはあって、それが、『仲間』として受け入れられることに伴うすべてのことなのだろう。

裏切られないことも、必要とされることも、愛されることも、許されることも、そして、受け入れられた自分を許すことも。

そんな、この船の『仲間』として受け入れられることで、ロビンがこの船から与えられることになった何もかも、そして、自分がこれから与えるかもしれない傷とか、痛みとか、そういったものまでも、ロビンはこわがっている。

そんなロビンにナミが今想いを告げたとしても、ロビンはうそぶいてかわすだけ。

逃げるだけ。

ほんとうに、なんて厄介な人間を好きになってしまったんだろう。

でも、もう止められない。

もう、終われない。

たとえ、誰も傷つけたがらないロビンに嫌いとか迷惑とかはっきり言われたって、止められない。

ロビンに他に好きな人ができたとしたって、終われない。

ロビンを好きである自分だけは、どうにもできない。

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