Side_Robin_2



どうにもいけない。

この船のクルーたちの言葉、とくに航海士の言葉は、ロビンの心を惑わせたり苦しくさせたりするものばかりで、とうに忘れていたような、消え去っていたような、そんな感情や考えが自分の中にわきあがって、はっとすることがある。

でもそれは、決して嫌なことじゃなくて。

「船医さん、急がなくてもいいのよ?」

いまだにあわあわと質問箇所を探している船医に、ロビンが言う。

「うん、ありがとな」

けれど船医はロビンの方を見ずに、結局焦りながらページをめくり続けた。

そのかわいらしい姿を見ているうちに、思い出す。

『その4、チョッパーをよしよしなでなでする』

航海士の、『意地っ張り』なロビンに対するアドバイス。

別に今は、さみしいわけでもなんでもない。

この20年の間に、そんな感情が凍りついていたこともあったが、何より、クルーたちのにぎやかな声が常に聴こえるこの船で、さみしいなどと感じることはありえないようにも思えた。

もちろん、人の中にいることが、さみしさを余計に募らせてしまうこともある。

幼い頃は、そういうことがほとんどだった。

一緒に暮らす人たちにとってロビンはいない方がいい存在だったし、能力者であることから町の人間にはうとまれた。

唯一居場所を提供してくれたのは学者たちだったけれど、博士はロビンにポーネグリフに関わらせようとはしなかった。

もちろん、やさしくしてくれることはうれしかったけれど、疎外感はどうしようもなくついてまわった。

だからロビンは、大勢の人に囲まれているときこそ、かえってさみしさが襲うことを知っている。

でも、この船ではそんなことはあり得なかった。

クルーたちが、あまりにも『ほんとう』のままでこの船にいるから。

それをまぶしく見つめているだけで、さみしさを感じる暇もないくらい。

それは、8歳で世界政府に追われる身になってからの、さみしさを感じる余裕もないほどに追い詰められた毎日とは、まったく別の時間だった。

「あ! 見つけたぞ!」

船医がうれしそうにロビンを見上げたから、ロビンはハナの手を咲かせて船医を持ち上げた。

「うわっ!」

そのまま本はテーブルの上のコーヒーの隣に、船医は自分の膝の上に乗せてみる。

「な、何するんだよ、ロビン!」

「この方が、ふたりとも見やすいでしょう?」
「そう、なのか?」
「ええ」

ロビンがほほえんでうなずくと、船医は「重くないか」とためらいがちに問いかけてきた。

「全然」と答えると、「ならいいんだけど」と小さな声で答えた。

照れているのだろうか、と思ったけれど、口に出せば船医が膝の上で恥ずかしがって暴れだすのは目に見えていたので、何も言わないことにした。

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