Side_Nami_2
寝顔が幼くなるロビンがこの船に乗ったとき、特技は暗殺だと言っていた。
そのときは、こんな得体の知れない人間が仲間になるなんて、と思った。
そもそもこの女は、ビビを苦しめていた張本人で、一国を争いの渦に陥れた犯罪者で、この船の敵だったのだ。
でも、2、3日一緒に過ごすうちに、とりあえず暗殺は言うほど得意じゃないな、と思った。
ルフィの言う通り、『悪いやつではない』と認めないわけにもいかなかった。
振り返ってみれば、ナミの知る限りでは、ロビンはアラバスタの誰も殺さなかった。
イガラムの暗殺だって、故意にかそうじゃないかは知らないけれど、失敗している。
ビビだっていつだって殺せたのに、殺さないどころか組織の中にいることを黙認した。
そうして、時には道を示すことさえしている。
何故ロビンがバロック・ワークスにいたのかは知らないけれど、砂漠の国を奪い返すために必要だった出来事の裏にはロビンがいたのだと、今ならわかる。
ビビが組織をかぎまわることを黙認したロビン。
ビビにクロコダイルが黒幕だと突き止めさせたロビン。
ウィスキーピークでアラバスタへのエターナル・ポースを与えようとしたロビン。
何度もルフィを助けたロビン……
ナミは甲板を見下ろす。
そこには相変わらずロビンにすり寄ってすやすや眠るチョッパーと、息をしているのか怪しいほどに、静かに眠っているロビンがいた。
ここに料理の下ごしらえをしているサンジでも現れれば、「何うらやましいことしてやがるんだ、てめえ!」と大声を上げ、この平和ですこやかな光景をぶち壊しにしてくれるに違いないのにな、と思って、そんなバカなことを考えた自分に苦笑した。
それは、自分にはできないことだ。
だが、するつもりもないことだ。
どんなにこの胸が、焦げつかんばかりにひりついて、どうしようもなく苦しくても。
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