Side_Nami_3



ずっとずっと抱き続けていた熱病のようなロビンへの想いが、薄れたわけではもちろんない。

薄れるどころか、いとおしさは増していると思う。

エニエス・ロビーから帰ってきてからロビンは、とてもとてもやわらかく、かわいらしく笑うようになったから。

以前から穏やかに、きれいに笑うひとだったけれど、それはどこまでいってもあきらめと終わりの世界の中で浮かべる笑顔だったから、どうしてもロビンが抱えてきた深いかなしみを反映したものになっていた。

それでもこの船に慣れてから青キジに再開するまでのわずかな期間には、『ほんとう』に楽しそうな笑顔を見せることも少ないながらあったけれど、それはあっという間に消えてしまった。

普段からかすかに浮かべていたほほえみも、うるさいぐらいに騒ぐクルーたちを憧憬のように眺める笑顔も、全部全部、どこかかなしみをまとった笑顔だったように思う。

だからその笑顔を見るたびに、ナミの胸はやりきれなさにしめつけられた。

けれど、今は違う。

やわらかく、かわいらしく笑うのは、心をまるごとあずけられるほどの深い信頼を、ロビンがこの船に向けてくれるようになったからなのだと思えた。

少し離れたところで、自分には決して届かない世界としてこの船での日常を過ごすのではなく、麦わらの船が作り出すにぎやかであたたかな世界が、自分の生きる場所なのだと真に実感してくれたから、そんなふうに、うれしい気持ちをさまたげるものが何もない、屈託のない笑顔で笑うことができるようになったのだと思う。

だからその笑顔を見るたびに、ナミの胸にいとおしさはあふれた。

ロビンがそんなふうにこの世界で生きることを肯定できる日が訪れる時を、誰よりも待ち望んだのはナミなのだと、自信を持って言える。

ロビンを好きで好きでたまらない。

その気持ちは少しも褪せずに……むしろロビンを見るたびにあふれだしてはこの身に満ちて。

手の届くところに帰ってきてくれたロビンに、手を伸ばしたくなる。

でも。

手を伸ばそうとすると……そこから先へ進もうとすると、底のない沼の中にでも沈んでいくような、そんな恐怖感で身動きが取れなくなった。

思い出して、しまうから。

長い夢の中で見た、八年前のあの日のことを。



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