Side_Nami_2



戦闘力なら桁違い。

普段ならCP9にとってナミなど障害物にもならなかっただろう。

それでもナミは、負けなかった。

それは『生きたい』と口にすることができたロビンに、傷を負いながらも乗り越えた過去に報いる明日を見せたいという何よりも強いナミの想いが、自分の力を何倍にも何十倍にもしたからなのだと思う。

強さとは力ではないのだ。

『助けていいんだとわかった時の、あいつらの強さに限度なんてないんだから!』

アイスバーグに言ったその言葉が、自分にもあてはまるのだとわかって、誇らしくさえあった。

ナミだって、ロビンを守っていける。

そして、ロビンを取り戻したとき。

周囲の目も気にせずに思わず走り寄り抱きついていた。

一緒に駆け寄ったチョッパーにも気づかなかったぐらいだった。

……よかった。

ほんとうによかった。

間に合ってよかった。

だいぶ傷だらけにはなっているけれど、もう一度笑顔を見ることができてよかった。

もう一度抱きしめることができてよかった。

……だから。

もう帰ろう、ロビン。

こんな、ロビンを傷つけるばかりの場所からは、さっさと帰ろうよ。

一緒に帰ろう。

一緒に、麦わらの船に帰ろう。

もしかしたら、ちょっとだけあんたの行動を怒っちゃうかもしれないけど、許してよね。

あんたは『ごめんなさい』って、困った顔して笑うしかないだろうけれど。

もしかしたら、今みたいに結構泣いちゃうかもしれないけど、許してよね。

だってロビンにもう二度と会えないかもしれないって、ロビンがあたしたちのために死ぬかもしれないって、そう思ったら、そんなかなしみこらえきれるわけがないから。

でも、こうして再び目の前にロビンがいる奇跡を思ったら、そのよろこびをこらえきれるわけがないから。

ちょっとだけ怒って、気が済むまで泣いたら。

そうしたら、また、笑えるよ。

だからふたりで、ふたりの部屋に帰ろう。

……色々な感情が次々とあふれだして、何をどう言葉にしていいのかわからなくて、心もめちゃくちゃだったけれど、顔も涙でぐちゃぐちゃだったと思う。

子どもみたいに泣いたから。

そして迎えに来てくれたメリー号の上で、ロビンが『みんな、ありがとう』って、笑って言ってくれたとき。

ああ、このひとはようやく、あたしたちを仲間だと……あたしたちにはロビンが必要で、あたしたちはロビンを信じていて、あたしたちはロビンを守っていける仲間なんだって、そうわかってくれたんだと思って。

やっと、安堵することができたのに。

それなのに。

ウォーターセブンに戻ってきて、傷と疲れを癒すために深い眠りにつき、目を覚ますと。

仲間として以外のロビンとの関係を。

一対一の、ひととひととしての関係を、どうしていけばいいのか……

まったくわからなくなっていた。

長い長い、夢を見たのだ。

長い眠りの中で8年前のココヤシ村での出来事を夢に見たナミは、仲間を守るためにはどんな手段をとることもいとわず、自らの命を差し出すことさえためらわない、そんなロビンとの間に生まれたこの想いをどうするべきなのか、わからなくなってしまっていた。



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