Side_Robin_6
「……しかしまぁ、兵器の設計図を持つおれと……」
結局は古代兵器の設計図をアイスバーグから託されたフランキーもつかまり、咎人を乗せた海列車はエニエス・ロビーを目指して海を駆ける。
これで、よかったのだ。
ロビンはそう、自分に言い聞かせる。
ロビンが麦わらの船に乗った日から、いつか別れの日が来ることはわかっていた。
そうしてそれが、クルーたちに裏切られての別れではなく、クルーたちを守るための別れならば、これほど幸福なことはない。
確かに、そう思っていたはずだったのに。
そう思う心に、いつわりはなかったはずなのに。
何故今になって、こんなにも迷っているのだろう。
あの決断が間違っていたのかもしれないと、悔やみはじめているのだろう。
たとえロビンがあの場所で存在を許されていることを信じていたって。
結果は何も変わらなかった。
きっともっと純粋な気持ちで、この身を捧げることができた。
でもロビンは、自分のとった行動が思ってもみなかったほどにクルーたちを傷つけ、心身ともに深い傷を負わせたことを知ってしまった。
だが戻ったところで、そこにあるのはみなで死ぬ未来。
「ウチの師匠が設計図を守るために命を張ったのは、そんなくだらん未来のためじゃねぇ」
フランキーは言葉を続ける。
ロビンだって、クルーたちがロビンの巻き添えになるという、そんな未来のために政府の条件をのんだわけじゃない。
そんな未来を避けるために、裏切りを演じたのだ。
「となりゃおれひとり逃げきれても意味はねぇ。おまえも何とか麦わらたちのトコへ帰るんだ」
麦わらの一味のもとへ帰る。
それができたらどんなにいいか。
今ならきっと、謝ることだってできる。
ロビンがひとりきりでくだした決断が、クルーたちを傷つけたことを謝ることができる。
でも、万が一奇跡が起こって、今回は難を逃れたとしても、ロビンがポーネグリフという世界政府が隠しておきたい世界の影の部分を知る限り、同じことが繰り返される。
そうしてそのたび、クルーたちは傷つくのだ。
そんな姿を見ることは、自分が傷つく以上につらい。
もしもロビンの巻き添えになった戦いで、クルーたちの誰かが……航海士が、命を落とすことになったりしたら。
ロビンはもう二度と、笑えない。
そんな未来、耐えられない。
「ムリよ。私は一緒にいるだけで、彼らを傷つける……!」
まるでいつか見た悪夢のように、クルーたちがロビンの戦いの犠牲になって死んでいく姿がフラッシュバックする。
そんな未来は、ロビンが一番望まない未来だ。
自分がいない未来はロビンを傷つけないけれど、ロビンの世界に麦わらの一味がいない未来は、想像するだけでロビンを打ちのめす。
でも。
「存在することは罪にならねえ」
存在することは、罪にならない。
フランキーの言葉が、ロビンの心をひどく揺らした。
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