Side_Robin_3
まさか、と思った。
海列車の窓に、長鼻の少年の姿を見つけたとき。
コックも同じ列車に乗り込んでいるのだと聞かされたとき。
船長や航海士、船医や剣士までも、この海列車を追いかけてきているのだと聞かされたとき。
いくらアイスバーグの口から真相を聞かされたとはいえ、ロビンを助けるために麦わらの一味がここまでするなんて、想像もしていなかった。
ロビンが麦わらの船で過ごした時間は、バロックワークスに身を置いた時間に比べても圧倒的に短い、数ヵ月という時間。
たったそれだけの時間しかともに過ごしていない、しかももとは敵という素性の知れない存在であるロビンを、アクア・ラグナを超えて命の危険を冒してまで追いかけてくるなんて……
どうしてそこまでしてロビンを助けようとするのか、わからなかった。
そうして、その仲間を想う麦わらの一味のやさしさを見たあとに、ロビンはまた自分の身勝手さを思い知らされることになる。
『仲間の犠牲の上に生かされて、あいつらが喜ぶとでも思ってんのか!?』
長鼻の少年にそう言われて。
『わかっていないのはあなたたちの方よ! 私は助けて欲しいなんて欠片も思ってない!』
思わず叫ぶように返して、はっと気付いた。
そう。
ロビンは助けて欲しいなんて露ほども思っていない。
むしろ、忘れてほしくなくて、裏切りという仲間に対して一番卑劣な手段を提案してきた政府にも従ったのだ。
裏切れば、どんなに時が経とうとも、クルーたちの心の片隅にロビンが刻み込んだ傷は残り続ける。
どうか、あなたたちを暗殺犯にしたてた私を、恨んで。
どうか、自分勝手な望みのためにあなたたちを裏切った私を、憎んで。
そして。
どうか、私を忘れないで。
あなたたちの船に、私が乗っていたという事実を、忘れてしまわないで。
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