Side_Nami_6



その圧倒的なまでのあきらめと終わりの世界の中にロビンがとどまるかぎり、ロビンを救出したとしても、また同じことが繰り返されるのかもしれない。

そのたびに何度だってナミは、この船は、ロビンを取り戻そうとするには違いないけれど……

どうしたらロビンは、ほんとうの意味で救われるのか。

それはサンジが言うところの、『CP9につかまれた過去の根っこ』の部分を解放することが第一条件。

操縦室から、正義の門が見えてきたという知らせが入り、考えに沈んでいたナミは我に返る。

正義の門のその大きさが、ロビンを追いかけてきたものの大きさ。

ロビンの心を支配していた、かなしみや痛みや苦しみの、大きさ。

そう思った。

「海賊娘の言った通り……」

正義の門を目前に見ながら、操縦室からの声に耳を澄ます。

リミットは、ロビンが正義の門を通過するまで。

それまでに、ロビンの心を縛るものを見極め、救いだすことができるのだろうか。

未来のことを考え出すと、不安は次から次へと浮かびあがってきて、ナミの心を支配した。

「あれ? ルフィは?」

「え? さっきまでここに……」

チョッパーに言われて先ほどまでルフィがいたはずのところを見ても、その姿はない。

「あれ!? 麦わらさん!?」

フランキー一家のひとりが指差した方向へ視線を向けると、ロケットマンの窓の向こうに、エニエスロビーの柵によじのぼる船長の姿を発見した。

「ムダだった……」

言葉を失うチョッパーと、あきれの言葉をそれぞれに口にするクルーたち。

それでも、あの考えなしの底抜けに明るい船長に率いられているからこそ、たくさんのひとをこの船は救ってきた。

救われた人間の中には、もちろんナミをはじめとするこの船のクルーたちも含まれる。

どこまでもまっすぐに自分の感情と信念に従い、仲間を想うルフィに引っ張られて、この船はここまで来たのだ。

だから、迷うことなどない。

ロビンを助けるためにバカみたいにつっこんでいったルフィを見てあきれながらも、そう思えた。

たとえロビンがこの世界に何も望んでいなかったとしても。

ありったけのエゴでもって。

ありったけの想いでもって。

この船は仲間を助け出す。

誰とだって、戦ってみせる。

ロビンの心までも解放できるかどうか、それはわからない。

でも、とにかく助けるのだ。

いつか、この世界で生きてきたことに……奪われてばかりだった人生に、20年という年月を強大な闇に追いかけられてきた日々に、報いることのできる明日は訪れる。

そんな明日をこの船は作り出せると、ナミ自身も信じている。

この船は、魚人たちに支配され続けたナミに、実際にそういう明日を見せてくれた船だから。

だから、ロビンが抱えてきた痛みや、かなしみや、さみしさに報いる今日が来る日まで。

ナミたちと共に迎え過ごす今日が、ロビンが乗り越えてきた過去に報いる日であるのだと、ロビンが実感できる時まで。

あたしたちは、何度だってあんたを助け出す。

だからロビン。

あんたがあきらめるとしたら、この船から降りること。

あんたがあきらめるとしたら、あたしたちから離れていくこと。

あんたが『生きたい』と。

あんたが『この世界で生きたい』と。

そう思える日まで。

あたしたちは、あんたを手離すつもりなんてないんだから。



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