Side_Nami_5
パドルで海の上に浮かぶ線路をしっかりとつかまえながら、一路、エニエスロビーへと向かうロケットマン。
波の上を揺られながら、いとしいひとの名を心の中で呼び続ける。
その呼び声が、遠ざかっていくロビンを引き止めるもやい綱になるような気がして。
ロビン。ロビン。ロビン。
今、あんたは何を思ってるの?
アイスバーグの屋敷までロビンに真意を尋ねに行ったルフィにもナミにもうそぶいて、海列車に乗り込んでまで助けに行ったサンジもウソップも拒絶して。
ロビン。ロビン。ロビン。
あんた今、少しは後悔してくれてる?
相談すればよかった。
打ち明ければよかった。
信じてみればよかった。
助けてって、そう言えばよかった。
やっぱり、メリー号に帰りたい。
ほんのわずかでもいいからそう思ってくれていれば、あたしも少しは救われるけど。
ロケットマンで合流したサンジに聞いた、事の真相。
バスターコールという、幼い頃のロビンからすべてを奪った圧倒的な力が麦わらの一味に向けられていて、だからこそロビンは抵抗する気もなくしているのだとサンジは言った。
だからクルーたちが助けに行っても、ロビンが素直に身を任せてくれるとは限らないと。
『んなもん関係あるかーっ! 絶対許さんぞー!』
そう言ったルフィのように、ナミも単純に怒ることができればよかった。
『放っといたらロビンは殺されるんだろうが! 死にてぇわけねぇから助けるんだ!』
今度『助けて』と言うのはロビンの番。
間違いなく、そう思う。
ロビンは今まで何度も、この船を助けてくれていたのだから。
でも、ナミは何も望んでいない、と言っていたロビンも知っている。
ロビンが本当に、この船に助けられることなんて望んでいなかったら?
そんな疑念が頭をよぎるのだ。
何もかもを承知で……死ぬことさえも承知で政府の出した条件をのんだロビンは、この世界に何も期待していない、と言った。
この世界に何も期待していないロビンは、この世界で生きることを捨てたのだ。
この世界そのものを……そして自分自身をも放擲したのだ。
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