仙バン(段戦)



これが『青天の霹靂』と言うのだろうか、と先ほど国語の授業で習った言葉が頭に浮かぶ。
学校帰り、キタジマに寄ってから何気なく覗いた裏路地で、それは起こっていたのだった。




数人の人が横たわっている。ただ寝ているわけじゃなくよく見ると皆傷だらけで伸びているようだ。
その数人の真ん中で一人だけ悠然と立っている人物、それが顔馴染みであったものだからふと立ち止まってしまったのだが。
その人物はこちらに気付くと、静かに舌打ちした。



「仙道!何やってるんだこんなところで!」
「…見てわからないかい?こいつらとちょっと遊んであげてたんだよ」




遊んであげていた、というのは勿論比喩的表現だろう。実際よく見ると仙道の顔や服や腕は赤い色で汚れていて、それが血だと認識した途端、バンはサッと青ざめた。


「だ、大丈夫なのか仙道!?」


思わず走り寄ると、仙道は心底面倒だという顔をしてバンを見下ろす。


「ほとんど返り血だよ。お前に心配してもらうほど俺はヤワじゃないしねぇ」
「で、でも…どうしてこんなこと…」
「こいつらからLBXバトルを吹っ掛けてきたくせに、負けたことに逆ギレして襲いかかってきたのさ。ま、返り討ちにしたけどね」



ふん、と不機嫌そうに鼻を鳴らす仙道に、そういえば一中の番長だったことを思い出す。郷田みたいにがっしりした体格でもない細身な体をしているのに、十分腕っぷしは強いようだ。伊達に一中を仕切っているわけではないらしい。
アキハバラキングダムで一緒のチームとして戦ってから、バンの父親に関係があるわけでもなく、シーカーでもないのに何だかんだ言って一緒に戦ってくれている仙道だ。
実は優しいのだろうとは思っていたが、実際こういう場面を見てしまうと少し怖じ気づいてしまう。
何度も危険なことをくぐり抜けてきたバンも、LBXバトルではない闘いに慣れているはずもない。


「怖いんなら今すぐママの元帰った方がいいぜ山野バン。俺の心配より自分の顔鏡で見てみな」


面白いツラしてるぜ、と皮肉に言い放つと、周りで気を失って倒れている人たちを乱暴に足で転がして退けバンの方を一瞥する。
紫の双眸は暗に帰れと促していて、バンは少しムッとした。



「関係ないかもしれないけどさ、仙道だって俺たちの仲間なんだ。心配しないわけないだろ」


バンはLBX三体を一つのCCMで操れたり、クセのある機体を難なく使いこなせる操作技術を持った仙道を単純に尊敬していたし、仲間としても認めている。
バンの気性のせいもあるが、仲間が怪我してるかもしれないというのに、心配しない方がおかしい。



「仲間?あぁ、今は仕方なくお前らの茶番に付き合ってやってるけど、どうせ俺は郷田の舎弟だよ」
「舎弟だとかそれこそ関係ないさ。本気で拒否すれば郷田も無理には誘わないよ。仙道も、わかってるはずだ」
「…だとしたら何だ?お前は俺にどうしてほしいんだい?」


裏路地の方に消えようとしていた体が体勢を変えてバンの方を向いた。
紫の瞳は純粋な疑問の色を写している。
バンは一つ一つ、言葉を選びながらゆっくりと答えた。





「仙道は一中のこともあるから…こういう喧嘩とか俺が止める権利はないと思う。だけど仙道が傷つくのは俺、見たくないんだ」
「…」
「だからさ、傷の手当てくらい、させてよ」
「…、俺は怪我したなんて言ってないけどねぇ」
「怪我してない、とも言ってない。だろ?」





仙道はとても驚いた顔をしてバンを見た。
まるで不思議な生物を見た、と言わんばかりに、いつも深く刻んでいることも多い眉間の皺も今は消えている。




次の仙道の言葉を待っていると、大袈裟にため息をついて裏路地から表通りに出てきた。
それからそっとバンの耳元に近づく。



「気持ちだけ受け取っておく。次は救急箱でも用意しておくんだな、バン」





“バン”



ぞくりと背筋が波打った。
くすぐったいだけじゃなくて、なぜだか少し恥ずかしいのは何故なのか。




ば、と急いで耳を塞ぐと仙道は意地悪く笑って夕日の中に消えていった。

















【それは他愛ない気まぐれ】











仙道は帰路につきながらおもむろにタロットカードを取り出す。
気になることがあれば占うのが習慣となっている仙道だが、先ほどの出来事が気になることと認識している自分が苛立たしい。
しかも、運命は予想もはるかにぶっ飛んだ答えを導きだした。




(“世界”の正位置…?………まさかねぇ……)





自分のタロットカードは嘘をつかないと自負していたが、今日の占いは調子が悪いことにして、ズボンのポケットに静かに仕舞い込んだ。



























********************

「世界」の正位置…大恋愛の始まり



タロットの意味調べてたときにこれ知ってどっかで使いたいなぁと思ってできた話。
ぶっちゃけ傷ついた番長っぽいことしてる仙道さんてエロくね?と思ったんですけど私の文章では表現できませんでしたTO☆SA←



 

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