天京+1年

HR途中/




部活後、更衣室で着替えをしているとふと天馬がどこか一点を凝視していることに狩屋は気がついた。
はて、何かあるのかと視線を追っていきその先に在ったものを認識して瞬きを繰り返す。


天馬が見ていたのは反対方向にいる剣城だった。剣城はもちろん着替えをしているが、天馬の視線に気づかないのか特徴的な改造制服を普段通り、むっつりとした顔でロッカーから出している。狩屋にはそれが凝視するほど面白いものだとは思えなくて首をかしげたが、天馬は時々目線を外しながらも剣城を見つめるのを止めない。



着替えを続ける剣城はガバリとユニフォームを脱いだ。汗でベタつくのだろう、男らしく勢いをつけて一気に。
すると、天馬は何故か見るのを止めて、皆の方へ背を向けひっそりと口元を緩ませた。
ますます訳がわからない狩屋を尻目に手早く着替えを済ませた天馬は、既に着替えを終え帰り支度をする剣城目掛けて飛び付いた。
少し前までは止めろ、とか退け、のような文句を言いながら引き剥がしていたのに、最近では諦めたのかなにくわぬ顔して天馬を貼り付けながら帰るのが常例になってきている。



「剣城、今日も優一さんのところついてっていい?」

「勝手にしろ」

「やったぁ!じゃあ、寄るついでにお見舞い買ってくよ」

「そんなこと言って、お前が食べたいだけだろ」

「あ、バレた?」

「なら素直にそう言え。…兄さんの分のついでに買ってやるよ」

「ほんと!!?ぃやったぁ!!剣城大好き!!」



剣城は柄にもなく照れたのか僅かに染めた頬を隠すように踵を返す。それに倣って天馬も剣城の腕に絡んだままとてもいい笑顔で一緒に出ていった。
その様子が背の高低さも合間って彼氏彼女にしか見えなくて、狩屋はその考えを振り切るようにブンブン首を振った。





「狩屋くん?どうしたの?」

「ぅっわぁ!?…なんだ輝くんか」


ついすっとんきょうな声を出してしまい自己嫌悪するが、輝は気にしていなかったようだ。いつもの無邪気で愛嬌のある瞳を狩屋に向けてくる。


「狩屋くん、さっきから天馬くんと剣城くんのこと見てたみたいだったけど、何かあったの?」

「え?えーと…」


まさか天馬が剣城の裸を凝視していたのが気になって、など言いにくいことこの上ない。
なんとか誤魔化そうとしていた矢先、着替えを終えたらしい信助がぴょこりと視界に入ってきた。



「わかった!羨ましかったんでしょう!」

「は…?」

「天馬と剣城、最近仲良いもんね。狩屋も皆と仲良くしたかったんだよね!」

「そ、それは」

「そうだったんだ!」

「え」

「だったら一緒に帰りましょうよ狩屋くん!」

「ぁ、え、オレは…」

「いいからいいから。どうせ暇でしょ?どっか食べに行こう!」

「僕、マック行きたいです!」

「じゃあそうしよっか。行こ、狩屋!」

「お疲れさまです!!」

「おー、よかったな狩屋。楽しんでこいよ」

「き、霧野せんぱいまで…!」



半ば強引に連れていかれる形で信助と輝に引っ張られていく狩屋を、その場にいた上級生たちは温かい目で見送った。
学年の仲がいいのは良いことだな、と神童が呟いたのを、霧野は笑むことで相づちを打った。

















病院の帰り道、河川敷沿いに歩きながら剣城に奢ってもらったおやつを天馬はペロリと食べ、二人は帰路についていた。
日は既に暮れかけている。



「松風」

「2人のときは名前で呼ぶって決めただろ」

「…てんま」

「なぁに京介!」

「またお前着替え中こっち見てニヤニヤしてたろ」

「なんだ、気づいてたの」

「当たり前だ。鬱陶しいから止めろってこの前言わなかったか?」

「京介の体がきれいだからさ、つい」


わざとらしい上目使いをしてくる天馬を上から睨み付けるが効果があるわけではない。逆に嬉しそうに顔を綻ばせてしまわれては、意味もないというより馬鹿らしくなってくる。
俺の体見て何が楽しいんだと問えば、返してくる笑みは普段見れる無邪気なものではなく、かと言って下卑たものでもなく、優しい柔和なものでもなく。




「俺が京介にマークつけたら、きっと、京介は恥ずかしがるだろうなって」

想像してたんだ。
欲情の色を含ませた青い瞳。



「そんなことだろうと思った」

剣城は呆れたような声を上げた。爛々と濡れる青い眼に金の目をずいと近づけ唇を奪うが、天馬は至って自然にそれを受け入れて剣城の背に腕を回す。
混ざりあったどちらとのかとも思えない唾液に喉を鳴らし、天馬がまた笑みを浮かべた。


「京介がほしい」

「…」

「京介」

「わかってる」



意識的にしならせた口元に、天馬は歓喜した。





「もう俺はお前のモンだから」





今さら白々しいことしてんな。










【いつまでも止まらない】


(京介は心も体も俺にくれてるって、わかってても確認したくなっちゃうんだ)



(なんたって、俺の京介はかわいいからね!)


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