天京天
照りつける日射しが肌を焼いていく。目に入りそうになるほど流れる汗を腕で拭うと、隣の剣城も流汗を鬱陶しそうに払っていた。
ふと見た剣城の腕は普段白いためか赤くなった肌が際立っていて、最近日焼けは軽い火傷だと習った天馬はさっと顔色を悪くした。
「つ、剣城っ、腕」
「腕?」
焦る様子で剣城の腕を指し示す天馬に剣城はああと合点がいった風に自分の赤く焼けた肌を見せた。
「すぐ赤くなるんだ」
「大丈夫なのか…?すごく痛そうに見えるけど」
「ああ。特に痛みはない」
「ならいいけど…」
剣城から大丈夫だと聞けば少しは安心できた。
しかし少しばかり痛みを感じる程度なら平気でなんでもない顔を装う剣城のことだ、全くもって大丈夫だということはないかもしれない。
よし、と拳を握りしめ決断する。
「剣城っ」
「今度はなんだ」
「腕貸して!」
「…?どういう」
「いいから!」
意味がわからず渋った剣城の腕を無理矢理掴むとそこは見た目通り熱くなっていた。やっぱり、と思った天馬は剣城の腕を掴んだまま水道まで引っ張っていこうとした。
「おい、松風」
「ちょっと冷やそう剣城。痛いんでしょ」
「だから大丈夫だって言って」
「いいから…」
「松風っ」
少々怒気の孕んだ剣城の声音を無視する。足の力の入れ方から本気で抵抗はしていないことがわかったからだ。
「天馬、剣城、どこ行くの?」
「ちょっと熱冷ましてくる」
同様に自主練中だった信助に呼び止められ手を振って答える。剣城は諦めたのか抵抗を止めていた。
水道まで来ると近くの木陰を探して掴んでいた剣城の腕を離す。
「別に、日焼けなんていつものことだ」
「そうかもしれないけど、剣城はもっと自分の体大切にした方がいいよ」
「また余計なお節介か」
「そう、悪い?」
「開き直るなよ…」
「剣城だから」
天馬は一度視線を反らし、また剣城の琥珀色の瞳を見据えた。
「剣城だから、こんなに心配してるんだよ」
天馬は本気で心配していたからここまで強引に連れてきたのに、剣城は呆れた様子で吐息をついた。
「わかった。冷やせばいいんだろ。もうすぐ時間だから手早く済ます」
「もう、テキトーだなぁ。おれは真剣だぞ!」
「はいはい」
「剣城のばかっ」
剣城の言う通り自主練時間は終わりがけだったためグラウンドに戻ろうとしたとき、ぱ、と腕を掴まれた。さっきと逆だとにわかに思う。
「何…」
「人の心配ばかりしてんなよ」
剣城が自分の鼻を指す。天馬が鼻頭に指を置くと、そこは若干熱を持っていた。
「赤くなってる、お前も」
同じだ、と薄く笑った剣城の顔を見ていると頭がボーッとしてくる。
我に帰るころには剣城は水道に戻って背を向けていた。
「あれ、天馬今日すごい日焼けしてるね」
「真っ赤じゃん」
「え…そう?」
集合したときに信助と狩屋に言われ、剣城の方を盗み見るとやっぱり白い肌は薄いピンクだった。
今度は痛そうではなく、熱そうだと思い直した。
【熱く焼ける】
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京ちゃん全く日焼けする気配がなくて羨ましい限りです。
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