磯天(+京雨)


風呂あがり、部屋に戻ると天馬はベッドに腰掛け足をぶらつかせていた。小さい子どものように左右に足を揺らして、鼻歌まじりに開いたドアの方を向く。

「あ、おかえり磯崎!」

「おう」

「パジャマおれのでちょうどよかったなー、よかった」

天馬と磯崎の身長はさほど変わらない。磯崎としては天馬にダボついたジャージなんかを着せてやりたいのだがサイズの差がないためそれは磯崎の一つの夢だった。そんなこと気にするはずもない天馬に少し傷を抉られた気持ちになるが天馬がよかったと言うなら良いのだろう、ということにする。

「磯崎?そんなとこ立ってないでこっち座れば?」

ドアの前で突っ立ったままなんとも言えない顔をしていた磯崎を天馬は不思議に思って声をかけた。今考えてもどうにもならないと、そうだな、と磯崎は天馬が座るベッドを正面に座った。下には四角いオレンジのカーペットが敷いてある。
天馬は一緒にベッドに座ればいいと言ってきたが天馬の隣に風呂上りに座るとシャンプーの匂いやら半乾きの髪の艶っぽさで自制が効かなくなってしまう可能性が大いにありえた。天馬も疲れているだろうし、明日はお互い学校に行かなければならないのだ。

「そうだ磯崎、今日は学校に太陽が遊びに来て」

「太陽?新雲の天才くんか…」

「そうそう!用事があって来た〜って雷門の暫く見学してたんだけど、休憩中にどっか行っちゃって…もしかして迷子にでもなっちゃったかと思って探してたんだ。そしたら…何してたと思う?」

「どこに居たじゃなく…?えー…何してたんだ?」

「……それがさぁ、…太陽、……剣城と校舎裏で…」

天馬は急に語尾を濁した。そして言いにくいそうにチラリと磯崎に目配せしてから目線を外す。
磯崎もまさかと思って息を飲んだ。

「剣城と、手を舐め合ってたんだ」

「ああやっぱりイタして…………、…え?手?」

天馬は太陽に声をかけようとして立ち止まった。太陽の手を、剣城が持って指を口に咥えていたからだ。もし怪我をしたからといってもいきなり舐めるなんてことにはならないだろう。
そこで剣城が手フェチだったことを思い出したらしい。それに、太陽は長細くスッキリとした、剣城好みの形の良い手をしていたということも。

「ふーん…」

「二人が付き合ってることは知ってたけど、まさかそんなことしてるなんて…びっくりしちゃって」

磯崎にとっては他人のフェチの話なぞどうでもよかったが、恥ずかしそうに話す天馬を見ているだけでも楽しめるものだ。それと天馬がこの話をしたことにも興味がある。

「お前はさ、天馬」

「ん?」

「何フェチなの?」

「おれは………首、かな」

「首ねぇ…」

磯崎は普段髪を束ねて流している。今も風呂上りで雑だが一つに縛っていて、それも入るのだとすると、ちょうどいい位置だ。
磯崎はおもむろに縛っていた髪を解くと、わざと真ん中で別けて首筋が見えるようにした。流れる磯崎の長い髪は色香の塊で、反射的に天馬はドキリとして少し身を引いた。その僅かな動きも磯崎の予想していた通りである。引っ込もうとした天馬の片足を鷲掴むと、両手で捕らえてす、と下から上へ線を書くようになぞった。

「っ……!?」

天馬の顔が驚きの混ざった色を含ませ引きつった。磯崎が何をしようとしているのかわからないのだろう。
話題を持ってきたのはそっちだろうに、磯崎はそんな鈍いところも好きだったが、天馬が理解できるまで大人しく待つ気もない。

ふくらはぎから足首、足先までするする指を滑らせ先端まで来たところで、足の指と指の間を割り舌を入れた。しっかりと唾液を絡ませ水音を立てる。

最初我慢していた天馬も次第に耐えきれなくなり、痙攣のように足全体が反応する。声が出そうになったのか口を押さえる気配がしたが、構わず磯崎は足の指先を舐め続けた。

「ん、!…やめッ…いそざき…!」

「そんな反応見て、止めると思うか?」

意地悪そうに釣り上げた磯崎の口の端から天馬を舐めていた唾液が滴る。さらさらと足をかすめる髪の毛、薄っすらと火照る頬、細められる翡翠より深い色の瞳が天馬の頭に飛び込んで、真っ白になった。

「グッ…!!」

「……あ、………っ?」

逡巡することもなく、天馬は何が起こったのか理解せざるを得なかった。足が痛みを訴えている。天馬の足によって蹴られた磯崎は瞬間手でガードはしたものの、反動で横倒しになっていた。
咄嗟に天馬は磯崎の怒りを覚悟した。突然蹴り倒されたら誰だって怒るだろう。磯崎が呻きながら起き上がるまで、天馬はその場から動けないでいた。

「…つぅ…」

「い、磯崎!大丈夫!?ごめん、おれ」

「動くな!」

「!?」

側に行こうと立ち上がろうとしたところで磯崎が声を上げる。ビクリと足が止まった。
乱れた髪を掻き上げ磯崎は赤くなった手を軽く振り顔を顰める。そして天馬の足元に胡座をかいて座り元の場所に戻ると、天馬の足を取った。
そして蹴られた方の手で一回撫でると、そのまま手を浮かし、勢いよくふくらはぎの横を叩いた。それはそれは思いっきりだ。

「……っいったぁああああ!!」

「お返し」

平手打ちの小君の良い音と共にヒリヒリとした痛みが天馬に伝わる。体をくねらせて少し涙を浮かせる天馬をうっすら笑って、また足を取り、赤くなった部分にそっとキスをした。

「俺は、この生意気な足が好きなんだよ」


はた、と天馬の動きが止まる。すると眉間に皺を寄らせ顔を背け、近くにあった枕で顔を隠した。枕の裏でどうなっているのか、容易に想像はつく。

「磯崎」

「おう」

「………おれといるときは、髪の毛、解いておいて」

「……おう、任せとけ」


長い髪の間から覗く瞳は、天馬が思っているより温かく、光っていた。







【どこだって君の一部でしょうけれども】






「雨宮の手は本当に綺麗だな…」

「剣城くんは、どの部分も綺麗だよ」

「……そうか」

「うん、そう」

「……」

「あ、照れてるーかわいい」

「うるせぇ」











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某大使に献上する磯天(と京雨)。
磯崎は例え故意でなくともやられたらやり返す精神だと思います。
エロ崎さんをもっとください。
足とか手とか舐める行為が好きなんです…剣城さんは手フェチ固定。




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