天京

※内容にはあまり関係ありませんがイナダンテレフォンネタがちょっぴり




剣城は、いつも狩屋たちといるときなど特に、一歩引いて皆を見ている。
輪からは少し遠ざかった位置にいるけれど話を聞いていないわけではなく、求めれば的確で冷静なツッコミも返ってくる。
最初のうちは剣城もこっちへきて皆と喋ればいいのにと思っていたが、天馬もだんだん一緒に過ごすうちにわかってきた。そこが剣城の居心地のいい距離感なのだと。

剣城は無駄な言葉も発することはない。だから専ら聞き役で、くだらない愚痴や他愛のない、例えサッカーと関係がない新発売のコンビニ菓子のことでもきちんと聞いてくれる。

「そういえば前剣城コンビニ行った時アイスの種類の多さに驚いてたけど、優一さんのお見舞い買うのにコンビニ寄ったりしないの?」

「コンビニは物価高だからな…できるだけスーパーを使うようにしてる」

「ああ、あんまり行かないからアイスの種類に驚いてたのか!」

「いつまで引っ張るつもりだアイスを…」

二人の時は皆でいるときと違ってたくさん話してくれるし、剣城はやはり大人数で騒ぐのがあまり得意ではないらしかった。でも、天馬はそれでいいと思っている。あまり大人数の中に溶け込んでしまったら、天馬は周囲に嫉妬して剣城を自分の元に無理矢理にでも留まらせておくための手段に出るはずだ。そんな強攻策をとらずとも剣城は天馬の隣にいてくれる。それがどれだけ嬉しいことか、無自覚でも天馬は感づいていた。現に、剣城が隣にいると天馬の口はより饒舌になり笑顔が増える。そして、剣城もそれは同じことだった。

皆がいるときと、二人のときの距離。異なる距離感を生み出しているのはひとえに剣城の心の距離だ。
その心の距離に一番近づいている優越感、感じながらまた剣城を見る。気づいた剣城はふ、と表情を和ませた。

「なんだ天馬」

「…剣城、おれ嬉しい」

「は?」

「剣城が笑ってくれて」

一刻固まった剣城は俊敏な動きで自分の頬を確認した。口元を咄嗟に覆ってなんとか無表情を取り繕おうと筋肉をマッサージしようとするが無駄である。天馬は携帯のカメラを素早く起動してピントを合わせた。









【ふたりを隔てる空気の層は、圧縮機でいくらでも縮めることができるのでした】

(おい、今撮ったな…?)
(撮ってない〜)
(嘘つけ、携帯貸せ!)
(やだー!京介の痴漢!セクハラ!)
(なっ…)
(…そこで怯むのが京介のいいところだよな)









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memoから持ってきた天京ちゃん。
フェイちゃんのことで落ち込む天馬と01の試合でキャプテンとして不甲斐ないと落ち込む京介の話を書きたかったけどいろんな思いが溢れてまとめきれなかったので全然関係ない距離感話になりました。



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