「それで、円卓の騎士がみんなでおれすごいびっくりしてー!アーサー王もかっこよかった!王様だからもっと威張ってるイメージあったけど優しい人だったし、あの人とミキシマックスできてすごく成長出来たと思う。それから」

「もっと落ち着いてしゃべれねぇのかよ…電車の中だぜ」

「磯崎だって真面目に聞いてるの?さっきから反応薄いし」

「俺はいつもこのくらいだって」

サッカー観戦をしてきた帰り、磯崎と天馬は電車に揺られ帰路についていた。
スタジアムでも異常なテンションではしゃいでいたというのにサッカーのこととなると底無しなんじゃないかと疑うほど体力を爆発させてくる天馬を見るのが実は磯崎が楽しみにしている一つだったりする。
しかし先ほどから話す内容がタイムジャンプで未来人と戦ってきたということばかりで退屈していたのも事実だ。天馬の話を聞くのは楽しいがその場に磯崎はいなかった上に他のやつらと時空を冒険してきた話をこれでもかと楽しそうに話すものだから、むくむくと湧き出るオーラは今天馬が話してくれた偉人サマたちにはとうてい敵わない醜いものだろう。
記憶を消されそうになったり仲間に裏切られるかと思ったりそんな時に天馬の力になれなかった自分を責める面がないわけではないが、はたしてその場に自分がいたとして天馬の力になれていたかと考えたときどれだけシュミュレートしようが正解はひとつだ。
こうして天馬は一緒にいてくれるがサッカーの時、普段の生活だって雷門のやつらといる方が天馬も楽しいはずだ。いつまで会ってくれるのか、隔たれた名門校の名が磯崎には邪魔で無力なものだと嘆くより他に方法を見出せなかった。


天馬、お前はいつまで俺を見ていてくれるだろう。
お前はどれだけの気持ちを俺に向けていてくれるのだろう。

心の中で噛み砕いて結局飲み込むその言葉たちを、吐き出すことをしていいのだろうか。


「いそざ…き…」


ハッとして顔を上げると肩に熱が集まっていた。天馬の頭が近い。
磯崎が考え事をしている間に天馬は磯崎の肩を借りて眠ってしまったらしい。元気だと思ったがやはり疲れていたのだ。
集まる熱がじんわり染みる。磯崎は強張っていた頬を崩して、天馬の顔を覗き込んだ。口は半開きで少しヨダレが垂れている。この短時間でよくもここまで寝れたものだと可笑しくなって、密かに笑った磯崎の心も、いつの間にかほぐれていた。


「はは…アホ面」





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