2.「だから、僕は愛に飢えてるんだよ」
最近シュウは変だ。
行動一つ取っても、会うや否や木の上から突然飛びついてくるし、練習中もこっそりエンシャントの森から抜け出してシャインのコートにいつの間にか来てこちに声援を送るし、おまけにやたら理由をつけては一緒に行動したがる。白竜にとってシュウは掴み所がなくふわふわとした存在だったから、最近のシュウの行動は目に余った。
そんなことが気になって、まだるっこしいことが嫌いな行動派な白竜は直接その理由を聞いてみた。
「今、ちょっと足りないものがあって」
「足りないもの?それが欲しいのか?」
「うん。でもそれは形がなくてね」
「そうか。それは探すのが大変そうだ。言ってくれれば一緒に探したものを…」
「うーん…探してるんじゃなくて、それはもう見つけてるんだよ」
「?どういうことだ?」
「君がした質問は"なぜ僕が君に付きまとうか"、だったよね?」
「そうだが…」
「その答えが"今僕に足りないものが欲しい"ってことなんだ」
「つまり?」
「僕は愛が欲しいんだ」
白竜の思考は一旦止まって、それから急速に動き出した。
シュウは形がなく探し物じゃないものが足りないと言った。得体の知れないシュウの欲するものは探す必要がないとも言った。
そして根本的に、その欲するものを欲しがる理由は白竜自身について回ることと繋がると。
「…オレが持ってるのか?シュウが欲しいもの」
つまり、愛を。
「そういうこと」
二人の頭上で小鳥が鳴いて羽ばたいた。
シュウは続ける。
「だからって、僕が君に何してくれって頼むわけじゃない。ただ君は僕と一緒に居てくれるだけでいいんだ」
「それで、お前の言う愛が満たされるのか」
「そう」
「なんでオレなんだ」
「ふふ、なんでだろうね」
微笑を浮かべて大事なところをはぐらかすシュウはやはり掴み所がない、とどうにも腑に落ちず。それをシュウも感じ取っているだろうに何もアクションを起こすわけでもなく白竜を見てにこにこしている。
シュウには愛が足りない。それは白竜から得られる。
なら、いいだろう。
「存分にくれてやろうじゃないか」
「え…」
シュウの造り顔が消えた。
代わりにシュウは瞳を僅かに大きくし、驚きを顕にした。
白竜はシュウを抱き締めていたのだ。愛を欲するシュウがどういう形の愛を求めるのかは白竜にわかるわけではなかったが、自分一人でわかっている気になっているシュウが勘に触る。
抱き締めたシュウはいつものふわふわした感覚はなく、ともすればあたたかい体でもなかったが、白竜は構わず腕の中に閉じ込めたままだった。
「白竜」
「足りそうか?」
「え?」
「愛だ。オレしか持っていないというのはオレが究極だからだろう?ならシュウにくれてやる。この程度で、お前が満足するとは思えないが」
暫くの沈黙を置いて、抱き締めた体が小刻みに震え始めた。ぎょっとして手を離すとシュウは予想通り肩を震わせ笑っており、白竜は動揺して思わずたじろぐ。
その様子を見てシュウの笑いが濃くなった。
「ほんと白竜は面白いね!あ、馬鹿にしてるわけじゃないよ。好きだなって、思っただけ」
終いには笑いすぎて涙が溜まった状態で飛び付かれるものだから、その衝撃を受けながら白竜はため息を吐くしかなかった。
「お前は本当によくわからんな」
【渇いた愛を満たす君へ】
「結局お前はどんな愛を求めてるんだ?」
「うーん…簡単に言うと白竜そのものかな!」
「…は?」
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白竜もっと残念にしたかったのに無理でした。
なんかただイチャイチャしてるだけだな…リア充ゴッドエデンごと爆発しろ!
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