きどつる
リク内容
「きどつるで甘ギャグ」
※鬼剣
※付き合ってる設定
※鬼道さんは監督
※最後主に鬼道さんがキャラ崩壊
「剣城ー!今日一年でマック寄ってくって話しになったんだけど、剣城も行かない?」
ロッカールームを出る手前、西園がひょこりと顔を出しそう言った。何か話し合っていると思ったらそういうことか。期待を込めて見上げる西園に少し申し訳なく思いながらも首を振る。
「これから用事があるんだ。また今度にしろ」
「えー!こないだも言ったよ、それ。剣城の今度は当てにならないんだから」
後ろで声を上げたのは松風だ。
狩屋が続ける。
「また病院?」
「いや…今日は違う」
「じゃあ夕飯の買い物とか」
「主婦じゃないんだから」
「ゲーセンかも」
「あ、剣城くん前欲しいゲームあるって言ってたじゃない?」
「ゲームよりマック行こうよ!」
西園、影山も加わり剣城をなんとかして連れていこうとずずいと迫ってくる。いつもは用事があるとだけ言えばあれこれ詮索せずに見送ってくれるのだが、今日皆の決意は固いらしい。好き勝手言われたものだが実の理由が理由なので素直に告白するわけにもいかない。しかし特に断る文句も浮かばず途方にくれていると、突然ロッカールームの扉が開いた。
あ、と松風が声を上げる。
剣城は扉を背にしていたので誰が入ってきたのかわからなかったが、その背後の人物が剣城の肩に手をかけた。
「何をやっている、遅いぞ剣城」
「鬼道、監督」
「剣城、監督に呼び出しされてたの!?」
「だったらそう言ってよ。紛らわしいなぁ」
「すいません剣城くん、引き留めてしまって」
「ならしょうがないね。また今度は付き合ってよ剣城!」
松風、狩屋、影山、西園は渋々引き下がる素振りを見せた頃を見計らって、鬼道は剣城の肩を軽く叩き小さく行くぞ、と囁いた。
「ありがとうございます、鬼道監督」
「おおよその検討はついていたがな、あれだけ言い寄られてしまっては断りにくいだろう」
剣城は元々鬼道に会いに行くつもりだった。監督としてではなく、一人の恋人として。皆に言えなかった理由はそこにある。約束の時間を過ぎていたため心配して迎えに来てくれたのだろうか。皆には悪いが、肩を掴まれたときの手の感触に柄にもなくトキメいてしまった。
「すぐに食事に行く約束だったが…少し予定を変えていいか?」
「?構いませんけど…」
「このまま監督室に来てくれ。外に出たらろくにキスも出来ん」
愛用の眼鏡を外して迫ってきた紅の瞳から目が逸らせない。唇の輪郭をなぞり催促されて、薄く口を開く。
普段の監督とはまた違った男の顔だ。久しぶりのキスに、体中が悦んでいるようだった。
苦しくなって口を離すと名残惜しそうに眉を寄せる。
いつもは眼鏡で見えない眼は普段隠れているから分かりにくいが、鬼道の顔の中で一番表情豊かだということに最近気づいた。
「嫉妬したんですか?…松風たちに」
「……お前は案外押しに弱いからな」
どうやら要らぬ心配をかけたらしい。最初はあまり感情を表に出さないものだから感情よりも合理性を重視する人なのかと思ったこともあったが、とんだ思い違いだ。
人より繊細で脆い感情をたくさん持つ人だからこそ、隠さなければ自分が崩れてしまいそうになるのかもしれない。
仕事はなんでもテキパキこなすくせにいかんせん恋愛に対しては不器用で、嫉妬深くて心配性。不器用だとか嫉妬深いとかに関しては人のことが言えないのだがそこには目を瞑ってもらうことにする。
「貴方以外にいませんよ…」
「ん?なんだ剣城」
「いえ、」
今は貴方しか見えません、なんて言ったら少しは安心させてあげることができるかもと考えたが、こうして助けてもらえるのならもう少し甘えてみたい。
「行くか」
「はい」
【控えめに繋いだ両の手】
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