豪鬼 (鬼道さん誕生日話)


鬼道さんの誕生日はいつだろうと某友人様と話してたときに
鬼道さんの背番号
帝国時代→10
雷門・ジャパン→14


じゃあ10/14でいいんじゃね?


という安易な発想から始まり


10/14て豪鬼の日じゃね?


ということで
『豪炎寺が鬼道さんの誕生日を祝う』
という結果に落ち着きました。
その結果の産物です。


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急に眼前に影がさした。
それは何のことはない、先ほどまで使用していたサッカーボールであったのだが、サッカーボールが目線の高さで影をさすというのも可笑しな話である。
目の前にかかげられた白黒のモノトーンと泥のせいで増えた茶のコントラストを暫し凝視していたがそれだけで相手の意図が伺えるわけでもなく、そのサッカーボールと、それを見せてきた本人を見比べる。
普段無口なのは別に良いのだが、こういう訳がわからない行動をとるときは一言でも説明を加えてほしいものだ。




「豪炎寺、部活は終わったぞ。片付けするなら早く…」


手に持っているボールを置いてこい、と言うか否か豪炎寺は背中を向け鬼道との距離をとりそのボールを足元に置き、鬼道の方へ蹴り出した。
条件反射でパスを受けとる。
怪訝そうな鬼道をそっちのけでボールをよこせと目が語っていて、仕方なく豪炎寺の足元目掛けて放ると、豪炎寺は満足げにそれをトラップしまた鬼道にパスを送った。






「鬼道ぉー!豪炎寺ぃー!部室鍵閉めちまうぞー!!」

本日の鍵当番である円堂が大声で叫んでいる。
しかし豪炎寺の方に今すぐ止める気配はなく、鬼道は小さく舌打ちした。




「鍵は俺たちでやっておく!お前は先に帰っていてくれ!」


円堂は了解と鍵を部室の看板にかけておく旨を伝えると、校門の方へ走っていった。きっとまた、鉄塔広場で特訓だろう。









さて、この不可解極まりない自己中をどうするか。
パスを送りながら鬼道はやはり豪炎寺の意図を読めないでいた。というか、こと豪炎寺のことに関しては深く考えるのを諦めている。
いろいろ考えていそうで、実は本当に単純な思考をしているのがこの豪炎寺という男なのだと、最近気づいたからだった。






もう既に夜の帷は落ちはじめていて、オレンジと紫のグラデーションが空を覆ってきている。そろそろ帰らないと、父が心配してしまう。


「豪炎寺、気が済んだか。もうじき暗くなるぞ」



パス練がしたいなら明日の朝にでもやれ、と飛んできたボールを上に蹴りあげ両手でキャッチする。
豪炎寺は背に沈みかかる夕陽を背負っていて、ゴーグルをしていても少し眩しかったが表情はなにやら堅いことがわかった。真一文字に結んだ口は怒っているのかと錯覚しそうなほどで、鬼道は怪訝そうに眉を片方持ち上げた。







「豪炎寺…いい加減何がしたいか教えてくれても…」


「…ゴーグル」


「え?」


「ゴーグル、外してくれないか」





それは、俺がした質問の答えではないだろう。
そう言おうとしたが、有無を言わさない豪炎寺の眼光に気圧され仕方なく言う通りにする。



ボールを足下に置き、結ったドレッドを崩さないようレンズを押さえてゆっくりと外す。
裸眼では夕焼けの眩しさが目に沁みた。





豪炎寺は暫く鬼道の方を凝視して、やがて鬼道に歩み寄った。
そして鬼道の頬を取ると、晒された真っ赤な瞳を覗く。鬼道は思わず喉をならした。





「おい、豪炎寺…」


「…きれいだな」


「そんなものより夕焼けの方がきれいだぞ」


「そんなことはない」








豪炎寺は瞳を覗き込んだまま、赤い眼にキスを送った。
鬼道が咄嗟に身を捩るが、それすら逃がさないというようにマントごと腕の中に閉じ込める。
鬼道の青いマントも赤みがかっていて、豪炎寺は、そのとき、その日始めての笑みを浮かべた。








「誕生日おめでとう」


「…!知っていた、のか」


「鬼道、こないだうちの院へ診察に来ただろう」


「カルテを見たのか」


「ああ」







クスクスと笑う豪炎寺に、鬼道は素直に笑い返すことができない。
キスされた目が特に、熱くて、豪炎寺を直視できなかった。





「それだけ、言うだけのために2人残ったのか?」


「ああ」


「言ってくれれば、家に招くこともできたのに…」


「それじゃ遅い。鬼道の家に着く前に、俺が我慢できない」


「不機嫌だったのは?」


「緊張していたんだ」


「緊張?お前がか?」


「特別な、日だからな…」







鬼道は、そんな豪炎寺の優しい笑顔に弱かった。
急激にくらくらと目眩が襲い、自分の顔が赤くなっていることを自覚する。
ゴーグルを着けていないせいでクリアに見える豪炎寺に、視線が游いで、それなのにいまだ鬼道を見る豪炎寺の瞳はいつもの倍はやわらかだ。




「、きどう」




抱く力が強くなる。
鬼道は目を閉じて身を委ねた。
瞼の裏は、いまだ赤い。






















【朱色より紅よりきれいな君へ】








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