||| plus alpha 「京介ー!」 どす、と抱きついてきた天馬は抱きついた後背中に両手を回してジャージが千切れるというぐらい強く先を握りしめた。 身長差があるため抱きつく位置は腹より上で胸より下ほど。抱き返せば京介の手がちょうど天馬の頭に届く。 なので、京介の機嫌が良いと天馬の頭を撫でてくれる。天馬はその瞬間がとても好きだった。 撫でながら京介がふいに天馬のおでこに自分の額をくっつけた。琥珀色の瞳が眼前に迫り天馬は驚いたが、その瞳が穏やかなのを感じ取って琥珀を見つめ返す。 「京介」 「陽の匂いがするな」 「ひの匂い?」 「お前の全身から、お日様の匂いがする」 「さっきまで外で昼寝してたんだ。だからかも」 京介は目を閉じて、スンと鼻を鳴らした。撫でていた手が止まり天馬の手に伸ばされる。その手を取って唇を近づけた京介に、天馬はくすぐったそうに笑う。 「なんかいいことあったの京介」 「兄さんに誉められた」 「だからかぁ」 「いい匂いだな」 「京介はちょっと、病院の匂いがするよ」 「そうか」 「うん」 「臭かったら離れてもいいぞ」 「まさか!そんなこと思うわけないじゃない!京介こそ、埃っぽいと思うから離れてもいいんだぞ」 「誰が」 ぎゅ、と抱き締める力を強めた天馬を、肩に頭を乗せ抱き返す京介の腕も更に強くなる。 苦しい。 京介が放った言葉を、天馬は受け止めて顔を埋めた。 July 14, 2012 00:29 back |