こっちにいることが多いです→@kouzuki47


※日常や小ネタ、感想など


||| plus alpha

「…各パーツ良好、起動します」

「調子はどうだレイ・ルク」

「はい、問題ありません」

「よし。アルファにお前がショートした後の記憶データを渡してある。もらってくるといい。その後、新しい体の調子を試してこい。それもアルファに伝えてある」

「インプットしました。アルファに接触します」

サカマキの部屋を出ると、アルファはドアの側に腕組みをし背を寄りかからせ立っていた。少し前からレイを待っていたようだ。
レイが出てきたのを確認すると、背中を向くように促した。スフィアデバイスを起動し、ボタンを操作しデータを送信する。

「…受信完了。これよりデータ解析に移る」

「トレーニングルームに移動する。その間に行ってくれ」

「了解」

解析したデータはラグナロク第三回、チーム・ガル戦。キャプテン、松風天馬。ポジションはMF。途中味方側選手の動きが停止して試合続行が困難になる。目的は勝利のみ。だから戦った。人数を数えるより勝利のために動く判断を下したのだった。シュートを相手GKに止められ、ボールを奪われ、その後の記憶が曖昧だった。インプットしたデータで送られてきたのは、ひどく簡潔だった。

「…データ取得は完了したか?」

「…試合は、同点だったと確認した」

「YES、お前がショートした後も松風天馬たちは奮闘したが…行方は最終戦に持ち越された」

アルファの言った言葉はデータ通りだった。敵フェーダ側セカンドステージチルドレンの能力の使用のため、エルドラド側選手に精神ダメージ、ただしレイ・ルクのみ効果なし、と。つまりあの時点で動けたのはレイだけで、下した判断は正しかったと言える。
しかし、ちらりと横切った思考データに、レイは動きを止めた。

「どうした?」

「…理解不能なデータを検出。バグと認証して消去に移る」

「バグだと?」

今まで幾度もの思考を繰り返しデータを自分のものにしてきた。シュミュレートをし、それを元に最適なものを判断する。それがマスターからの命令でもあった。
しかし今回の思考データは、今までのシュミュレートに一度も引っかかってこなかったものだ。レイ・ルクは戸惑っていた。

「そのバグというのは」

「理解不能…理解…」

「おい」

「………もう少し」

「レイ・ルク…?」

「もう少し、私が頑丈であったら」


発言してから、更に混乱に陥る。自分がなぜこんなことを思考しているのか、全くわからなかったのだ。それこそ、今すぐ試合中の時のようにショートしてしまいそうだった。

しかしアルファは、いつもの無表情を壊すことはなかった。冷静にレイを見据えると、目の前にやってきてスフィアデバイスを起動させた。

「今日の試合を録画したものだ。見ればお前のバグの正体がわかる」

映り出された映像はインプットされているガル戦で、もう記録されている情報を再度記憶する必要はあるのかと思ったがアイカメラはデバイスの映像を視認した。
そこに映ったのはレイがショートを起こし倒れた直後のものだった。

『レイ・ルク!』

『くっ…!駄目なのか…』

セカンドステージチルドレンの攻撃で選手は立ち上がるのも不可能な状態だったことが見て取れる。一歩動くことすらだ。
だがこの映像でバグの正体がわかるとは考えにくかった。アルファの意図は、レイの高性能AIでも理解しかねた。

「なにも異常な部分は見られないと認証」

「NO、違う。そこではない」

レイはアルファを凝視するしかなかった。
アルファは続ける。

「フェイ・ルーンの精神干渉を受けたとき、ダメージなく立っていられたのはお前だけだった。そして、フェイ・ルーンはその間に攻撃をしようとした。だが、お前は立っていた。フィールドに立って、相手に立ち向かった」

「それが命令であったからだと返答する」

「YES、しかしお前の思考はそれだけで済ませていない。…信じ難いことだが、お前は仲間のために自分がショートしてしまったことを不甲斐ないと感じているようだ」

「…」

アルファの話は理解できなかった。つまり演算の結果がデータの解析不能と出ている。そのデータ演算が正しいのだというならば、イコールで弾き出される答えは。


「わからないのなら今はそれでいい。私も少し前までわからなかったものだ。…サカマキ様に報告は必要ないだろう。トレーニングルームに向かうぞ」

「……了解」

演算の結果、解析が不可能ならばそのデータは間違っているということだ。それ以外の答えなどない。確認した事項は間違っている。それだけのことなのだ。


レイは少し混乱の治まった回路で、松風天馬の顔を引き出していた。
試合開始前、キャプテンと修正した人物。
なぜそれを今出したのか、それすらレイには理解不能な事柄だったのである。






【胸中を締める痛み】


(それを知るにはまだ足らない。)









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まさかここまで活躍してくれるとは思わなかったレイ・ルクことるっくんに敬意を。こうだったらいいなーとか漠然と考えたもの。
るっくん早くサカマキさんに治してもらってね。






March 21, 2013 01:49
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